――――― NBSAネット・ニュース 2005年9月号 ―――――

 

  ネパールの視覚障害者を支える会

Nepal Blind Support Association (NBSA)

 

 会員 支援者のみなさん お元気でしょうか  


ネパールはすっかり秋の風 昼間の日差しは強いのですが 夕方になるととっても涼しく毎晩鈴虫のコーラスを鑑賞しております  地震も台風もないカトマンドゥ  こんな素晴らしい環境にいるのでさぞかし仕事に精を出しているのだろう と思えるのですが 庶民の生活はそれどころではないのです  確かにネパールは世界的に有名な貧困を極めた国ですが お祭は何をおいても楽しむことをモットーにしています  10月の大祭ダサインと11月の光の祭ティハールをいかに祝おうか すでにもうお祭モード  当NBSAカトマンドゥ支部も10月1日から10月18日までお休みをいただきます  祭についでうれしい話は  反政府組織のマオイスト派が3ヶ月の停戦宣言をしています  誰もが安心して祭の準備に打ち込める  こんなうれしい話はない とほとんどの庶民は歓迎しています  その反面 国王が2月1日に全権力を掌握し 国王指名の内閣を発足させたことに反発し なんと半年後になった8月から国王政府反対の運動が 知識人や学生を中心に盛り上がっています  さらにこれまで立憲君主制の姿勢を崩さなかった 第一党の国民会議派の議員までが 政治は国民自身が行うべきだと 他政党のように共和制支持を表明し始めました  今後の動静がいかなるものか 占星術師にでも占ってもらいたいところですが  もしかするとネパール初の大統領が誕生するかも知れません  ネパールの大統領 なんだか慣れない響きのようですが 興味深く見守っていきたいところです

ダサインの復習です
NBSA
のネット・ニュースを2年以上読んでいる人には御馴染みのことばですが  久しぶりにこの秋祭りを復習してみたいと思います

ダサイン これを抜きにしてネパールを語れず と言われる程伝統と宗教色にみちたお祭りです 起源はヒンドゥ教徒のお祭りだそうですが ネパールはヒンドゥ教と仏教が混合している部分が多いので やはり国民的行事になるのです ダサイン中は本格的なチベット仏教の総本山 ボーダナート以外 ほぼすべてのお寺で賑やかに祝われます  様々ないわれがありますが 簡単に言ってしまえば秋の収穫祭のようなものです  豊穣 家族の健康を祈り 神への感謝といったところがいわれのようですが  宗教色が濃く ダサインとはヒンドゥの神が悪魔を滅ぼしたことを祝う大事なお祭りであることを 付け加えさせていただきます 
どれもそれぞれのしきたりに則って行われます  この間毎朝礼拝と沐浴を欠かさず 最も神聖な儀式には女性が立ち会うことを禁じられます  また私たちにはちょっと不気味なのですが ダサインのクライマックスが近づくと 深夜から翌日の午前中にかけ 寺院や家で動物を屠り いろいろな神に奉げます いけにえにする動物は水牛 ヤギ ヒツジ ニワトリ アヒルの雄で それぞれ怒り 欲望 愚かさ 臆病 無関心を象徴しているそうです  動物の頭はお寺や神棚に供え 残った部分は当然年一回のすばらしいご馳走になります  動物のいけにえを捧げるのは 戦いの女神ドゥルガーとの戦いに敗れた敵兵が動物に姿を変えて逃げたのを 捕らえて殺しドゥルガー女神に捧げるのだと聞いています  ヒンドゥ教はマヌ法典など教徒の生活を規定する 後代法典の基礎となっていきますが 神話的な部分がおおく 象頭の神様 猿の軍隊 蛇神 巨人など 数多くの神様が登場し 壮大な宇宙的物語が展開されています  秋の夜長にインドの神話の世界に浸ってみるのはいかがでしょうか  

でもあまり宗教的でない庶民的な楽しみもあるのです  肉をふんだんに食べ 酒を飲んで唄ったり トランプ博打に興じたり またテレビのCMでインスタントラーメン 紅茶を買うと 金のネックレスや新品の服が当たる などに加えて山羊やニワトリまで懸賞になり みんなこぞってラーメンを食べたり 無駄なものまで買物をしたり ネパールの消費経済が一気に上昇する時期でもあります 

最近の活動報告
1.カセットテープ ライブラリー事業
本事業は始めやや難航しましたが 何とか軌道にのり始めました  現在手がけているのは中篇小説で ほとんどが 国語の授業で紹介されるような有名な作品で やや固め  この事業で一番大切なのは音訳 朗読者の根気  初心を常に見直すように2週間に一度の朗読ボランティアの勉強会を始めました  半分が雑談で終わるのですが ボランティアで集まって下さるので感謝しています

2.チャリティー・ピクニック 
少しでも日本の援助を頼らずに活動しよう と思いついたのがきっかけです  ピクニックのスポットがカトマンドゥ盆地内でも人気の高いダクシンカリだったせいか 実費でもぜひ参加したいという人が51名も集まり 食っては踊りと大変にぎやかでした こちらでは若い人でも昼間から酒を飲む習慣がありませんが よく飲まずにここまで乗れるものだ と驚くほどの盛り上がりようでした  ボランティアも多数出席しましたが あまりに大判振る舞いをしたせいか 自立に向けた収益は1500ルピー(約2600円)とささやかでした  幹事さんもう少し頑張ってください

3.点字講習会
10
月下旬にマレーシアの団体から点字プリンターとコンピューターの寄贈を受けます その準備に急遽 英語 ネパール語点字の講習会を始めました  本格的に技術をもつボランティアを養成するので大変です  なぜか仕事を持っている人に限って熱心  少ない余暇に何か社会奉仕をしたい と集ってくる人々だからでしょう 時間の遅れもなく 現在4名が週4日の集中講習を受けています

新しい事業と新しい国際技術支援のあり方
マレーシアの盲人協議会は古くから日本点字図書館の援助を受けて 立派に自主運営をしている団体のひとつです  日本から受けた援助を日本に返すのではなく もとは自分たちと同じような境遇であった途上国に恩恵を施そうと 日本点字図書館から伝授された技術を 周辺の途上国に媒介しています  今年はネパールに白羽の矢が当たり 当NBSAカトマンドゥ支部がカウンターパートに選ばれました  おそらく他の国も候補に挙がっていたと思われますが 他でもなくネパールを選んでくださった事に大変感謝しています NBSAは講習を受けた後 まず初めに点字のニュースレターなどを毎月発行していく予定です  日本の点字毎日に比べると約1世紀の遅れですが  カセットテープライブラリー共々 ネパールの視覚障がい者にとり 新しい盲人文化を築く礎となりますよう 精一杯がんばります

(社福)日本点字図書館理事長に国際協力の経緯と激励のお言葉をいただきました

コンピュータ点字製作技術指導講習会 
20051023日〜26日 カトマンドゥ市内ラジソンホテルにて開催予定)

 日本点字図書館がこの国際協力事業を始めたのは 1994年からである 私が日点の館長に就任したのが1991年  その前からぜひ国際協力事業を展開したいと考えていたが 1993年のESCAPアジア太平洋障害者の十年を機に 助成団体の協力を得て始めた  1993年はバングラデシュ インドネシア マレーシア タイ4か国の調査 それに基づきマレーシア盲人協議会をカウントパートに この事業を展開することになった
 私が視覚障害者の分野で国際協力をしたいと思った原点は 1985年、東京ヘレン・ケラー協会に頼まれネパールに調査に行ったことに始まる  同協会が国際協力事業を展開するに際し どうしてネパールを選んだかは別にして 私は見学した統合教育校で 視覚障害児・生徒にほとんど点字教科書がないことに愕然とした  これではせっかく学校に行っているのに、学習効果はあがらない   そこでたまたま点字出版所を持っている東京ヘレン・ケラー協会なら 点字出版所を設立して 点字教科書が出版できるはずなので その国際協力事業を実施するように進言した それはネパール盲人福祉協会(NAWB)によってみごとに実現し 小学1年生用の教科書から順次点字化されていった   それを横目で見ながら 東南アジアに行ってみると ネパールと同じ環境がそこにはまだあった  当時 日点ではすでにコンピュータ点字製作技術が定着していたので 日点としては旧来型の点字製版はやめて ITを活用することにしたのである  
当初は マレーシア盲人協議会をカウンタパートとして マレーシアを中心に 同国内及び周辺の国々から盲学校や図書館の職員を招き 技術指導した  また 技術指導の成果がすぐにあがるように 講習会で使用してもらったコンピュータ 点訳ソフト、点字プリンタなどの機器を講習生に贈呈した  この方式は2002年まで続けたが国際ボランティア貯金の助成が打ち切られたために 2003年からはカウンタパートにマレーシア周辺の国に出かけてもらい 指導する方針に切り替えた  2003年はモルディブ 2004年はバングラデシュのチタゴン そして今年がカトマンズである  

ネパールは前述したように 点字教科書については充分な手当ができている しかし まだ仲間に配布するような雑誌や簡単な点字印刷物を製作することは容易ではない  
今回の援助が きめ細かい点字資料の製作につながってくれれば 日点にとって望むところであるNBSAに大いに期待している   (社福)日本点字図書館理事長 田中 徹二


 新刊案内「カリガンダキ河沿いの地質と自然災害」(英文)850ルピー
Guide book for Himalayan Trekkers Series No.1
編著者:B.N. Upreti & Masaru Yoshida

神秘の渓谷カリガンダキを丹念に歩いて調査した、ヒマラヤン・トレッカーズ待望のガイドブック
特に地質学ファンにはお奨めの一冊 カトマンドゥのタメルの書店やマップハウスで購入できます

著者の吉田勝氏にちょっと教えてもらいました:

カトマンドゥは盆地?それとも谷?
日本ではカトマンドゥ盆地と呼ばれていますが ネパールの人々はカトマンドゥ・ヴァリー、つまり谷と呼んでいます。盆地と谷ではなんだか様子が違う気がするのですがなぜですか?
地質学用語ではそこに堆積物が溜まった場所が盆地というそうです
一方、現在のカトマンズはすでに堆積物が溜まり そのうえを河がながれているので谷と呼んでいるのではないか とのこと どちらでもよいのでしょうが 前述の説明だと 地質学的には谷より盆地と呼んでもいいのではないでしょうかね?

*** お知らせ
NBSA 秋のスタディー・ツァー締め切りせまる
2005
111日(火)〜20051110日(木)

一年で一番きれいにヒマラヤ山脈が見れる時期を選びました  恒例のネパールの視覚障がい者と共にアンナプルナ山麓を歩く 友交(ゆうこう)トレッキングに加え 視力障がい児が学ぶ学校見学 それに古都カトマンドゥとパタンの市内観光を入れた楽しい企画です  詳しくはNBSAホームページ:http://at.sakura.ne.jp/~ilte/nbsa/ をご覧ください 最新版の会報誌もこちらに掲載しています 

編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住
NBSA
ネット・ニュースは音声パソコン対応編集をしています