――――― NBSAネット・ニュース 2005年10月号 ―――――

 

  ネパールの視覚障害者を支える会

Nepal Blind Support Association (NBSA)

 

お待たせしました NBSAのネットニュースです


会員のみなさま 支援者のみなさま 読書の秋がやってきました

と言ってもこれは日本の話 夏が過ぎ 寒からず暑からず 頭を働かすにはタイミングが一番よいので 読書の秋と呼ばれるようになったのでしょう  ネパールの人は雑誌や新聞をよく読むそうですが 硬い小説などは学校を卒業するともう2度と読まない  しかし学校にいる間も点字が読めても読む本がない視覚障がい者が ネパールには大勢います  今年の2月から始めたカセットテープライブラリーは トーキングブックとも呼ばれ 点字を習う機会のなかった人や 途中で失明した方に好評です  さらに私たちは自分自身の指で読書の面白さを知ってもらうことを目的に 新しい事業 点字出版を始めます

 

人はなぜ読みたいのでしょうか  これを語るとき 私は元教師だったある日本人の 話をします  その方は視力のみならず 指の感覚も徐々に衰え ついに読書ができなくなりました  そこで先生は舌先を使って読むことを始めたのです  そこまでして読みたい 読むということは人間の基本的な欲求のひとつではないでしょうか  

今回はNBSAの活動報告以外に ネパール人の読書傾向などに触れてみます  


先月予告編を流しました コンピュータ点字製作国際技術指導講習会が終了しました  

20051023日〜26日 カトマンドゥ市内ラジソンホテルにて開催)  

 

 コンピューターは難しい そして楽しい  

これは日本点字図書館の資金援助 マレーシア盲人協議会の技術支援を受けて行われた講習会です 受講者は全員が晴眼者のボランティア  ネパールの目の不自由な人々のために点字の本を作るのが目的で 全員がPCとプリンターの技術を習得しました  NBSAボランティアのほかに 学校の先生が3名 他の盲人団体の職員が2名参加しました  講習後にコンピューター2台とスェーデン製の点字プリンターをNBSAが頂きましたが NBSA以外の人々もこれらを活用してもらい 広く役立ててもらうと私たちは考えました  日本から日本点字図書館理事長の田中夫妻 マレーシア盲人協議会のウォン夫妻 それにマレーシア在住のスェーデン人講師ソーレン氏を交えた簡単なオープニングセレモニーを行い すぐに講習に入りました ソーレン氏は受講者に合わせて大変ゆっくりした英語で説明するのですが 誰もが上がりっぱなし  1日目は緊張のうちに終わりました  二日目からはややリラックスしたムードが流れましたが 受講者用のノートブックの使い方が全員わからない  ネパールではデスクトップがまだ主流で それすら普及率が非常に低いのが現状です・u@ ノートブックに慣れるのに半日かかりました  3日目からは点字コンピューターの使い方もほとんどマスターし 質疑応答の時間が長くなりました  ネパールの人々は本当に順応性がありますね  講師のソーレン氏は各国で同じ講習を行ったがネパールの受講者が一番のみこみが早い と言ってくれてNBSAスタッフは大喜びしました  

はるばる遠い国からいらっしゃった技術者の方々 お疲れ様  本当にありがとうございました  

 

 今後点字プリンターをどのように活用するか  

せっかく頂いた高価な機材です  もちろん有効に使いますが 配布先などの問題が山積みしています  ネパールも点字印刷物は無料で配達されますが 地方への郵便制度がまだきちんと整備されていませんので せっかく送った書物もあっさりと破棄されてしまう可能性があるのです  住所の制度もまったく不完全です  さらにネパールにどのくらい視覚障がい者がいるのか また点字の識字率すら把握できていません  そこで初めのサービスデリバリーはやはりカトマンドゥ周辺に限られてしまうのです  ネパール全土の発展が望めない限り  視覚障がい者の福祉も発展しない という厳しい現状が横たわっていますが 力いっぱい頑張ります  応援お願いします 

 

 最後にネパール人の読書傾向についてふれてみます  

(ネパール国立図書館で2年間司書のボランティアをした山田伸枝氏に投稿をお願いしました  )

 

ネパール人の読書傾向? 

さて 点字図書製作に当たってのネパール人の読書傾向ということですが 難しいですね  

読書する人としない人とは極端な差があるし 特に地方に行けばまず読むべき図書が無い  ネパールのほとんどの小学生が読むことのできる本といったら教科書以外にありません  その教科書も 児童の読書欲を刺激して楽しみながら読書能力を伸ばすようなものではありません  地方ではその教科書も手に入らないことが多いのが実情です  学校に図書室があるわけでなし 村や町に興味ある図書が自由に 無料で読める図書館なんてあるはずもなく・・・・  けれど本を読みたいと思っている人は沢山います  やさしく書かれた実用書などは待ち望まれているでしょうね  その前にしっかり文字を覚えてもらわないといけませんが  ネパールでは文学といえば伝統的に詩歌のことで 現在も学校では詩をよく書かせます  私もたびたび詩の朗読を聞きました  詩を作るのは大好きですね  ネパールの人は即興で素晴らしい詩を作りますよね  ドホリと呼ばれる男女の即興の掛け合い歌の伝統が息づいているのでしょうか  

詩集のほかにも 小説も沢山出版されています ほとんど短編ですが推理 悲恋 シリアスなどなどいろいろなジャンルがあり どれもよく読まれているようです  外国の翻訳ものも多く出ていますが 全訳でない場合が多いですね  

私が付き合っていた人の中に ネパールでも特異と言ってもよいほどの読書家がいて 家の中は本に埋まっていました  しかし一般には学者でも学生でも 本当に本を読みませんね  むしろ読む環境 読んで考えるという教育ができていなかったというべきでしょう  

残念ながら ネパールでは未だ 読書調査 といった類の調査 統計が取られたことはありません  そうした調査がおこなえる基盤さえも整っていないということです  

点字図書は大切な活字文化の一つだと私も思います  自分で字を追いながら ゆっくり好きな時に一人で読めるのは点字です  大いに賛成です  

ところが点字に翻訳するには著作権処理が必要ですが ネパールの出版物 とくに翻訳書を見ていると どうもきちんと著作者の許可を得ているものは少ないような感じがします  

もちろん著作権制度はあります  1965年著作権法制定 1997年改訂 その後2002年新著作権法が制定されましたが それが遵守されているとはとても思えない  法の立場に立てば 必ず著作権の処理 許可を得るべきだというべきでしょう  しかしネパールの実情 多くの読者のことを考えれば 人々の知的要求こそ第一義として考えていくことが重要だとすれば 翻訳 点訳は許されてしかるべきだと思いますし さてさて難しいところです  

 

 なるほど とても参考になりました 山田さんありがとうございました  

 

編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住


次号のお知らせ

来る1115日に 2000人のネパールの視覚障がい者に白杖を贈ろう の記念式典がカトマンドゥで開催されます  1年がかりで計画したビックなイベント  その模様を詳しくお伝えします

 

本会の活動などを載せた NBSAホームページ:http://at.sakura.ne.jp/~ilte/nbsa/ は最新版の会報誌も掲載しています  ぜひご覧ください

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