―――  NBSAネットニュース 2006年2月号 ――――

 

 

ネパールの視覚障害者を支える会(NBSA)の会員 支援者の皆様

 

日本は豪雪と聞いています  当地カトマンドゥでは なんとヒマワリの花が見られるほど暖かくなりました  ネパールの暦では6つの季節があるのですが 実際は雨季と乾季に分けられるでしょう  少しでも日が射すと 高度の高いカトマンドゥでは 日中の温度がすぐに上がり 日本では夏にしか見られない花が咲くこともあるのです

 

さて NBSAカトマンドゥでは例年1月と2月は定期活動に重点を置いています イベントは屋外で催されることが多いし 屋内でのセミナーでは暖房設備がないため 長時間座っているのが難しいからです  また今年の冬は治安情況が好ましくなく移動も大変でした  そこで細々とですが 定例の月間カセットテープ・マガジンと 音声訳小説の貸し出しに専念しました  本日は2月8日に行われた地方選挙について少々報告いたします

 

● 最近のネパールレポート−2

どこまで進むネパールの紛争 地方選挙が終わって

 

紛争と呼ぶにはあまりにものんびりした雰囲気が漂う王都カトマンドゥの街並み  新聞の第一面は学生と武装警官が激しくぶつかり合う写真と バレンタインデー・ギフトの派手な宣伝が占めています  この奇妙な組み合わせがいかにもネパール というかカトマンドゥらしい  その反面 地方では1月だけで治安部隊 警察 軍隊に40名 マオイスト派120人が死亡  さらに一般市民が巻き添えをくって大勢亡くなっています  ここまで読むとカトマンドゥはソドムとゴモラのように退廃を極めているような感じかも知れませんが カトマンドゥは小国と云えども行政の中枢を置く首都です  国王の直接統治の下 市民はいま民主主義とは何か 国王の独裁政権を維持すべきかを問いただす岐路に立たされています  連日の7大政党や学生の抗議行動はもう日常茶飯事と化したかのようですが 胸の内には様々な思惑があるようで 2月8日に行われた選挙がそれを顕著にあらわしたようです  

 

● 先月後半から2月中旬の経過

1月19日 国王政府は固定電話と携帯を一時的に切断し 政党指導者などを大量に逮捕

1月20日 7大政党は大集会を予定していたが それを阻止するために国王政府は外出禁止令を発令し 大集会は散会状態に陥り 同時に政党党首等が自宅軟禁される 幹線道路をすべて遮断

1月26日 7大政党による全国バンダと前回の巻き返し集会 意気あがらず

1月28日 マオイスト派による立候補者の襲撃をはねのけて 政府は最終立候補者名簿を公開

しかし その前に対立立候補者がいない市は 無投票で当選とし その数58市中22市がこれにしたがった  また攻撃を恐れた候補者の辞退が相次いだが 政府はこれを容認せず

1月30日 マオイスト派が選挙ボイコット手段として パタン市の市長候補者に対し発砲

2月1日 午前9時 前日の予告通り国王が演説し ネパールの平和と民主主義を守るため 選挙の参加を呼びかけた  効果のほどは分からないが 視聴率はおそらく100%だっただろう

2月2日 国王演説の内容を非難する集会やデモが相次ぐ

2月5日 マオ派の1週間連日ゼネスト(バンダ)開始

2月8日 地方選挙 その二日前に政府はこの日を国民の休日と定めた

不信なものは猫の子一匹も通さない厳重な武装警官の警戒と マオ派の襲撃を恐れた有権者の足は投票所から遠のくばかりだった 当日選挙ボイコットを呼びかけた党員など約500人が逮捕された

2月9日 開票結果 投票率21%(99年66%)36都市 618議席

 

今回の選挙は全国58都市の4,146議席を争うものであったはずが 7大政党のボイコット運動 マオイスト派の立候補者殺害やその他妨害工作が広範囲に展開され 無投票当選1,288議席 立候補者不在議席は2,251 当日選挙により当選した議員数は36都市618議席にとどまった   

 

投票率21% この数字は何を物語るものだろう

 

● 選挙結果と日本の対応

選挙の翌日 インド 米国と肩を並べ 日本の外務省も地方選に対する抗議声明を出した  これまでの日ネ外交は 援助はするが政治には口を出さない ネパール政府にとってはありがたい存在だったので 政府筋はかなり衝撃受けたようであり また日本ひいきの多い民間ネパール人の間では 大いに歓迎されたように見受けられた

 

● 外務報道官談話   (外務省ホームページより引用)

 

ネパール王国における地方選挙について    平成18年2月9日

1. わが国は ネパールにおける地方選挙が 国民の広範な支持を得られない形で実施され その過程で多くの政治指導者が拘束されたことに対して遺憾の意を表明する  また 文民の殺害を含む暴力行為が行われたことを強く非難する  

2. わが国としては ネパール王国政府および政党が和解の精神をもって双方が歩み寄ることが必要であると考え そのための前向きな措置が早期に講じられることを期待する  

3. わが国は 引き続き マオイストに対して暴力行為の停止と対話を通じた和平の達成を求める  

                                   以上

                                                               

● 昨年秋に行われたNBSAスタディーツァーの感想をいただきました

(西村 希志子)

 この国の人といろんな話をしてみたい・・・垣間見たネパールで 私はその思いを感じました  カースト制度に縛られ 文化的にも日本とは格段に差がある生活の中で「夢」はどれほど叶うのでしょうか  一部の特権階級を除いて 幼い頃から労働力とされている子供達は夢を持てるのでしょうか  ただ こういう思いは生活に困らない国から来た外国人の傲慢さかもしれませんし 幸せの基準は他人が決めるのではなく個人の意識の問題なので こういう思いを抱くこと自体が間違っているかもしれません  人は生まれる環境を選べないのでその中で生きていくしかない その環境の秩序は守らなければならない  でもその秩序が人間として間違っているのなら変えていくべきなのでしょう  今ネパールはその時期のまっただ中なのでしょうか  

 今回のツアーで一緒にトレッキングに行った視覚障がい者が時間と空気を楽しんでいる姿を見て そのたくましさとサポートの方の気配りに感動しました  障害があっても甘えることなく進んでいる姿は人生に立ち止まっている人達に何かを伝えることができるような気がします  ツアーをサポートして頂いた現地NBSAの皆様に感謝いたします

 

● ネパールの民話(2)

熊とジャッカル

 

 ある日一匹の熊とジャッカルが義兄弟の契りを結びました  やがてジャッカルは 熊とは本当の兄弟にはなれないな と感じるようになりました  そこでジャッカルはうざったい熊を何とかしてやっつけたい と考えました  あるときジャッカルが赤唐辛子の畑で 唐辛子を食べているふりをしていると やがて熊がやってきて 俺にも喰わせろと言い出しました  「すまないが この畑は王様が立ち入り禁止にしているもんでね」とジャッカルが言っても熊は聞きません 「じゃ こうしよう  俺が丘の上まで行って見張り役を務めるよ  いいようだったら合図をするから OKだったらいくらでも食べていいんだよ」と言いました  

ジャッカルが丘に登ると 熊は唐辛子を食べ始めました  そのうちだんだん口や舌が辛くなってきたので 熊は怒ってジャッカルを追いかけました  

 熊はジャッカルを見つけましたが 今度はスズメバチの巣を太鼓に見立てて 叩く振りをしているではありませんか もちろんジャッカルの手は宙を舞っているだけです  熊はそれを見て 自分も太鼓を叩きたい と言い出しました「それはだめだね これは国有財産だから 僕はこの太鼓を誰にも触れさせることができないのさ」とジャッカルは答えました  熊はしつこく食い下がります  そこでジャッカルは「それじゃ 僕が丘の上まで行って見張ってやるよ  OKだったらサインを出すからね  そうしたら思う存分太鼓を叩いていいのだよ」と言いました  

ジャッカルのサインが出ると 熊は両手でスズメバチの巣を叩きました  中から出てきたのはブンブンうなるスズメバチ  熊はあちこち刺されて痛さのあまり転げまわりました 

 熊は今度こそ怒りに燃えて ジャッカルが待っている丘の上まで駆け上って行きました  ジャッカルはとても満足そうに ブドウの木のブランコで揺れています  

これを見た熊は自分もブランコをしたい と言い出しました  「ねえ お兄さん  残念だけどね これはあんたに無理さ」と言っても熊は聞きません  そこでジャッカルは熊とブランコを交代するのですが 熊がブドウの木にぶら下がったとたん ジャッカルは思い切り熊を押し出しました  哀れな熊は死の谷底にまっさかさまに落ちていきました とさ  

 

(ジャッカル:イヌ科の動物  手先  お先棒をかつぐ人 下働きの意味もあります)

 

 

編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住

 

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