―――  NBSAネットニュース 2006年6月号 ――――

 

ネパールの視覚障害者を支える会(NBSA)の会員 支援者の皆様

 

今年の雨季も降雨量が少ないのでしょうか 毎日猛暑が続いています  カトマンドゥは日本より幾分涼しいようですが 高地に位置するため 日差しが厳しく外出には日焼け止めが欠かせません  

日本各地様々でしょうが 皆様もご自愛ください

 

      活動報告 カセットテープ ライブラリー事業に新風

私たちはネパールの小説などをテープに吹き込み 貸し出しをしています  これまでテープに直接録音してきましたが 最近やっとデジタル化が可能になりました  これでオリジナルの朗読がCDで長期間保存できます  とはいえ CDラジカセを持っている人が少ないので  朗読した小説の貸し出しは従来通り カセットテープで行います  ネパールで早くCDラジカセやコンピューターの普及を祈るばかりですが 後数年は実現しそうにないでしょう  またスタッフのほとんどがメカに弱く 技術的なトラブルがよく発生します  メカに強い方 カトマンドゥにお越しの際はぜひ技術指導お願いします 

 

      ワールドカップ イン ネパール

地球上の多くの国で 4年に一度 登校拒否や出社拒否が起こると聞きます  ネパール全国的に見ればワールド カップの知名度はまだまだですが 首都のカトマンドゥの若者の間では 爆発的人気です テレビの普及率が高まったのがその理由です  

日本とネパールの時差は3時間15分ですから 第一戦のキックオフがネパールでは6時45分 家族と夕飯を食べながら もしくは大きいテレビのあるカフェーで仲間と ゆっくり観戦できます  そこで下町テクのカトマンドゥでもかなりお洒落な店 ベーカリー カフェーで学生 若いサラリーマンにインタビューしてみました

 

あなたはどの国のチームをサポートしたいですか?

1位 日本

2位 韓国

3位 英国

 

実はこれ インタビューしたのが日本人(私)だったから おせいじで日本を応援したい と答えたわけではないのです  正直言って日本はネパールで最も人気のある国 対ネパール援助筆頭国でもあります  また同じアジア人どうしだから応援する と答えた人が多かった  そこで日本以外ならダントツで韓国を応援したいようです  3位の英国ですが 隣国インドが英国の植民地であったこと グルカ兵が英国軍に昔から雇用されていたことなどが理由なようです  途上国であまり人気がないのが米国です  ネパールも例外ではないようでした  またクロアチア ウクライナ チェコなど新生国家を知っている人は皆無で 学校でほとんど地理を教えないため 中米 アフリカ諸国の国名も初耳だった人が多いようでした  それらの無名の国のチームにはいたって中立で ゴールが決まると どのチームに対してもすさまじい歓声が起こります  ゴールを決めるのはどこの国でもめでたいこと と思っているのでしょう  近所からすごい拍手や歓声が聞こえてくるので それがわかるのです

 

では優勝するのはどの国のチームだと思いますか?とも聞いてみました

1位 ブラジル (ロナルドはすごい人気者)

2位 ドイツ (とても強そうな気がするそうです)

3位 英国またはアルゼンチン 

 

ということで ネパール人は同胞アジアの経済大国日本を応援したい が技量に関してはかなりシビアな見方をしていたようです

2006年6月15日現在)

 

      モウー迷惑

ネパール人の多くはヒンドゥー教徒で牛 特に牝牛を大切にします  いまだに誤って牛を殺したりすると 猛烈な非難を浴びます  カトマンドゥの街中で牛がのんびり寝そべっている姿を見た方も多いでしょう  牛が集団で道路に寝ていると 大変な交通渋滞を起こすのです  そこでカトマンドゥ市当局は かなりの牛を郊外に追いやり 渋滞対策の成果を上げています  しかしインドに国境を接する南ネパールでの牛信仰はいまだに健在で 牛がかなり幅をきかせています  発展のきざしを見せる南の都市部の主な交通手段は人力の三輪車(リキシャ)です  このリキシャは図体が大きく 車輪がむき出しなのでよくかすったり 白い杖が巻き込まれて折れたり など案外トラブルが多い乗り物です  そこに牛がいるとさらに厄介で リキシャの渋滞が発生するのですね  ここでも政府は牛を郊外に移す計画があります  誰も公然と口に出しませんが 牛信仰は時代の流れに沿わない と感じ始めているようです  庶民にとってはモウーたくさん といった感じなのでしょう 

 

      ネパール国王の直接統治廃止その後を追って

 

5月26日 ネパール政府と武装組織ネパール共産党毛沢東主義党(以下マオ派)の和平交渉が 3年ぶりに開催  これは双方のトップによる本交渉に向けた準備交渉となり  25項目からなる行動規範が調印された  交渉の焦点となったのは新憲法の制定に向けた制憲議会選挙を前に マオ派が武装解除し 同選挙に参加できるか否かであったが未決に終わった  しかし政府側はすべての軍事行動を停止することで合意に達し マオ派が要求していた拘束中のマオ派メンバーの釈放を施行した  また停戦を国際機関が監視することをも 行動規範の中でうたっている  

 

6月2日 マオ派 首都カトマンドゥで過去最大の20万人集会

マオ派は将来の制憲議会選挙を見据え 活動を政治の表舞台に移す姿勢を見せ始めた  会場では 王室を宣伝する掲示板が取り外され 国王の処刑や追放を掲げ共和制実現をマオ派は訴えた  また集会でマオ派は 主要7政党の政府に対し 下院議会を即時解散してマオ派が参加した 暫定政府の下で新憲法制定へ向けた制憲議会選挙を実施することや 現行憲法の廃止を求めた   現行憲法については政党側が国王の権力を弱体化させる議会宣言を採択して一部の憲法条文を事実上無効にしただけで 廃止の措置はとられておらず 議会宣言の合法性への疑問も依然くすぶっている  

 

6月7日 コイララ首相 インド訪問

ネパールのコイララ首相は4月の就任後初の外国訪問としてインドを訪問し ニューデリーでシン印首相と会談した  コイララ首相はインドに軍事 経済援助を要請し インド側もこれに応じることになり会談は成功裏に終わった  インドは支援を通してコイララ政権への影響力を強め マオ派をコントロールしたい意向ではないか とみられている

 

6月12日 ネパール国王は儀礼的存在に

ネパール下院はギャネンドラ国王から新法に対する拒否権を剥奪(はくだつ)し 下院を最高権力機関とする法案を全会一致で可決した  下院はすでに国王から軍統帥権などを取り上げる議会宣言を採択しており 政党関係者によると 国王は完全に儀礼的な存在になった  法制化に伴い議会の招集は首相が行い 法の制定に国王の承認は必要なくなった  

 

6月16日 ネパール政府とマオ派が歴史的8項目に合意

コイララ首相、主要7大政党党首とマオ派最高指導者プラチャンダ議長がカトマンドゥで会談し  1ヶ月以内にマオ派が参加する暫定政府を樹立し 1年以内に国連監視下による制憲議会選挙の実施などで合意した  

 

といった感じでネパールの政局の行方は ここ数日間で互いに譲歩しながらも 舵取りを巧みに進めていった反政府武装組織マオ派がリードしているように見受けられます  マオ派は独自の人民政府の解散を8項目で了解したようですが マオ派の武装解除については 触れていなかったようです  今後の話し合いによっては攻撃が再開されることもありうる ということでしょうか  しかしながらネパールの人々は 気分転換の才に長けているのか 今現在国民の生活が脅かされることはなく カトマンドゥっ子の人気の的は ワールド杯(ちなみにネパール式発音だとワールド・コップ)のロナルドに集中しているようです (6月18日現在)

 

      ネパールの民話(5) ハンサムな夫

 

昔あるところに とてもとてもきれいなお姫様がいました  父上の王様は この姫を溺愛していたので 娘にふさわしいこの世で一番賢い者に嫁がせたいと思っていました  そこで王は 娘にふさわしい夫を探すよう大臣に命じました  

 

大臣は四方八方出かけて行き テンディと名乗る聡明な男を見つけて 城に連れ帰りました  しかし テンディはまるでハンサムではなかったので 姫は彼を直ちに退散させました  そして父王にさっそく文句を言いました  

「お父様 テンディという男はわたくしにまるで不釣合いよ  彼よりハンサムな人を見つけてください」

 

そこでテンディは王に言いました  

「陛下 わたしは自分よりすごい賢者を知っています」

「そういうことなら その男をここに連れて来なさい」

と王は言いました  

それからテンディは長い間旅をして ある日 高い木に登って枝を切っている男に会いました  

この男はおろかなことに まさに自分が切り落とそうとしている枝 そのものにまたがっていたのです  しかしその男は若く ハンサムでした  

「ああ 姫様の夫にふさわしい男がここにいるな」とテンディはつぶやきました  

そしてテンディはその男に 木から下りるよう言いました  

「僕と一緒に来るなら 君は一生涯働かなくても楽に暮らせるよ  しかし幸せになるとは限らないけどね」とテンディは言いました  

男は喜んでテンディについて行きました  彼らが城に着いたとき「君はじきに王様の前に出るよ  そうしたら膝を折り 花を捧げなさい  でも決して一言も話さないように」とテンディは言いました  

姫は若くハンサムな男を見て有頂天になり 男に何一つ問わずに 直ちに結婚してしまいました  やがて姫は 自分の過ちを実感することになり 苦情をもらす相手もなく 自分を責める以外 誰にも文句が言えないことを知ったのでした  

 

編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住

 

本会の活動やスタディーツァー情報などを載せた NBSAホームページ:http://at.sakura.ne.jp/~ilte/nbsa/ は最新版の会報誌を更新しています  ぜひご覧ください

NBSAネット・ニュースは音声パソコン対応編集をしています

NBSAネット・ニュースは会員以外の様々な方に流しています 受信をお望みでない方は ご面倒でもご連絡ください