―――  NBSAネットニュース 2006年7月号 ――――

 

ネパールの視覚障害者を支える会(NBSA)の会員 支援者の皆様

 

日本は大雨 高湿度 台風と毎日がさぞかし大変なことと察します  ネパールは本格的な雨のシーズンに入り 涼しくて快適そのもの  しかしネパールも 世界的異常気象に巻き込まれています  このまま地球規模の高温が続くと ヒマラヤの雪も解けるのでは と専門家は危惧しています  まぁ遠い未来のことですが カトマンドゥ盆地も水の底に沈むのでは?  備えあれば憂いなし ゴムボードでも買っておきましょうか  

 

        定例活動報告

 

相変わらず点字プリンターの操作に慣れず 四苦八苦していて恥ずかしい限りです  そもそもコンピューターの基本的技術が未熟なのが欠点です  あと数回点字マガジンを発行する頃には 何とかスムーズにいくでしょう  今年の初頭から3冊目のマガジンを 6月末にどうにか発送できるにいたりました  

カセットテープ ライブラリーの方は 作成と配布共に順調です  当方には高速テープコピー機がないので 需要にあわせるのが難しい状態です  日本から寄贈されたラジカセで 1本 1本 丹念にコピーしている状態です  どなたかもう使用されない30倍速の高速テープコピー機を お持ちの方はいらっしゃいませんか  ネパールへのご寄贈 切にお願いいたします

 

● 視覚障がい学生今年は何人がSLCに合格か

 

ネパールでの成功の秘訣は 学歴 家柄 縁故関係などが揃っていないとダメだ と考えている学生が多いそうです  日本では雇用条件がかなり広範囲になり 個性的な生き方が尊重されるようになったので なんだか古臭い気がします  ネパールではその出世の第1条件がSLCに合格すること  これはSchool Leave Certificateの略で 英語のまま使われ いわば高等学校卒業証明のようなものです  これに合格すると 短大などに進学する資格を取得したことになります  今年の受験者は22万5032人で そのうち46.5パーセントが合格しました  大変高い水準です  ネパールの学制については以前触れたことがあるので 省略いたしますが SLCに合格すると 一生涯にわたってハクがつくので 学生は必死に勉強する半面 受験に失敗すると自殺者が出るほどすごいものなのです  その栄誉あるSLC試験に多くの視覚障がい学生が合格し 様々な新聞で広く報道されました  SLCの発表は7月5日でしたが いまだに統計的数字が出ていないので 何人の視覚障がい学生が合格したか まだはっきりしていません  しかし現在のところ全国で40名以上合格しているというニュースが入っています  とくにめざましかったのはポカラ市のアマルシンハ学校の学生で 受験生17名全員が合格しました  女子10名 男子7名 そのうちアルパン コイララ君は最優秀の成績で合格  晴々した顔でお姉さんから祝福のティカをもらっている姿が新聞で報道されました  NBSAにとってこのポカラの学校は大変に馴染みが深く 様々な支援をしていますが とくに昨年は学校の校舎の一部を借り切り 将来への自立に向け 生活訓練を行いました  SLC合格者の中には他の地方で進学する学生も多いでしょう  この生活自立訓練で習った 清掃 洗濯 調理など大いに役立ててもらいたいものです  皆さんおめでとう! NBSAカトマンドゥ支部では 祝辞のファックスを準備しています  

 

       ワールドカップ イン ネパール 2 複雑な思い

 

ついに終わってしまいましたね 4年に1度の地球のお祭  ネパールでも惜しまれて 惜しまれて ダイジェスト版がいまだに放映されています  楽しかったには違いないが 南米や他の途上国の上位進出がならず これではまるでユーロカップだよ と何となく不満もあったようです  いつの日かネパールもワールドカップに出場できるといいね と励ますと よい選手が誕生しても きっとどこかの国へ出稼ぎに行くだけだよ  日本かな? とちょっと皮肉な答えが返ってきました  うーん 複雑な気持ちが残りましたね 現にネパール人は地球上のありとあらゆる国に出稼ぎに行きます  とくに最近問題になっているのが 国連平和維持軍の前線兵士として雇用されること  アフリカなどで人質にされ 殺害されるというケースが増えています  国家が早く安定し 経済が発展することを祈るばかりですね 

 

       ネパールの民話(6) 目の不自由な兄と足の不自由な弟

 

昔むかし あるところに7人の兄弟がいました  そのうちひとりは目が見えず ひとりは足が不自由でした  兄弟の父親が死ぬと すぐに障害のない兄弟5人が集まり 父の遺産を分け合うとふたりの弱い者を家から追い出しました  

「ああ 本当に困った  私を手引きしてくれる者がいれば 神とたたえようものを」と言って目の不自由な兄は嘆きました  

「神様 私を背負ってくれる人がいればなぁ」と足の不自由な弟も言いました  

そこで兄弟はお互いに助け合うことにしました  目の見えない兄は足の不自由な弟を背負い 弟は兄を案内します  弟は行く手に1本のロープを見つけました  

「兄さん よいロープが落ちているよ  持って行こう  きっと役に立つよ」と言いました  

「でも僕はロープを運べるかなぁ」と兄が答えると

「僕が持っていくから平気だよ」と弟はロープを拾いました  まもなく弟は道端できれいな石を見つけました  

「兄さん白いきれいな石が落ちているよ  持っていこうよ」と弟は言いましたが 兄は反対しました  

「俺はお前を背負っているんだよ  どうやって石まで運ぶんだ」

「兄さん いつかきっと役に立つよ  持って行こう」と弟が言うので兄は納得しました 

さらに進むと弟は穀物の篩(ふるい)を見つけました  

「兄さん 篩いが落ちているよ  これは持って行かなきゃね」と弟は言いました  

 「僕たちには嫁さんがいないんだよ  いつその篩いを使うんだい」

「兄さん それは確かです  でもいつの日かきっと使い道があるでしょう  お願いです  僕に運ばせてください」と弟があまりにせがむので 兄は渋々聞き入れました  

 

日が暮れて 二人はある一軒家を見つけました  

「誰かいませんか」と二人が声をかけました  

「静かにおし ここは人が泊まるところじゃないよ  早くお行き!」ひとりのおばあさんが飛び出してきて言いました

「おばあさん 僕たちはくたくたです  もう一歩も動けません」と兄弟は言いました  そこで、おばあさんは丘に住んでいる怖い人食い鬼の話をしました  鬼たちは毎晩村にやってきてたくさんの人を殺して 食べていました  そこで村人は 毎晩ひとりずつ 村人を鬼に食べさせることで話をつけたのです  村人は約束どおり 毎晩この家に家族の誰かひとりを行かせ 鬼たちに食べさせていました  今夜はこのおばあさんの番でした  

「おばあさん 僕の兄は目が見えません  でも暗くなれば僕だって何も見えないのです  これからいったいどこへ行けというのですか」と足の不自由な弟は言いました  

「あんた達に警告するのはあたしの義務だから注意はしたよ  でももう好きにするがいいさ」とおばあさんは言いました  夜 本当に人食い鬼たちがやって来ました  

「ああ 今日も晩飯の匂いがするなぁ」家に近づくと鬼は大声で叫びました  もう逃げることはできません  兄は大声で叫び返しました  

「おう 俺はここにいるぞ!」鬼は驚きました  これまで犠牲になった人々は みんな恐れをなして物音ひとつ立てなかったのですから  

「おい お前の耳を投げてよこせや まず耳を食ってやる」ひとりの鬼は家に入ることをためらって 戸口で叫びました  目の見えない兄は恐れずに大声で答えました  

「俺だってお前の耳を食いたい  お前の耳を先に中に投げてくれ」と言うと 鬼はびっくりしました 

「いや 初めにお前の耳を俺が食いたい  耳を投げてくれ」と鬼は答えました  

「よし それじゃ俺の子供の耳をくれてやる」と兄は答え 篩い(ふるい)を鬼に投げてやりました  鬼は驚き 子供でもこんな大きな耳を持っている奴なら きっとすごい大男に違いないと思いました  今度はもうひとりの鬼が呼びました  

「お前の歯を見せてくれ」

「おう ここにうちの下男の歯がある  これを投げるからな」と兄は言って 道で拾った石を投げつけました  鬼は白くてかたい石を見て震え上がりました  3番目の鬼は

「お前の腸を見せてくれ  俺はそれを食うからな」と叫びました  

「さぁさぁ 鬼さん  俺の子供の腸が来ましたよ」と言って 目の不自由な兄はロープを投げてやりました  人食い鬼は心から怖がって もう誰も家に入れず 一目散に逃げました  それ以来人食い鬼たちは二度と村人を取って食べることをしませんでした  そして 目の不自由な兄と足の不自由な弟はその家に住みつき いつまでも いつまでもずっと幸せに暮らしましたとさ  

 

● 特報  NBSA秋のスタディーツアー 参加者大募集

NBSAのスタディーツァーは毎回バラエティに富んでいる!

こう言って3度も参加した方がいます  ネパールの視覚障がい者と共に登る アンナプルナ街道 そして学校や施設の見学もできます  お買い物の時間もたっぷりとってあるので カトマンドゥの庶民の生活に触れられるのも魅力のひとつ  とにかくおもしろい と評判です  ガイドボランティアもこちらで用意しますので 視力に障がいのある方も気楽に参加できます  おいでませ ネパールへ!

日程などはhttp://at.sakura.ne.jp/~ilte/nbsa/ をご覧ください

 

編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住

 

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