―――  NBSAネットニュース 2006年9月号 ――――

 

ネパールの視覚障害者を支える会(NBSA)の会員 支援者の皆様

 

灼熱のネパールガンジから無事帰還しました  涼しいカトマンドゥから出張した私達には驚異的な暑さ  朝起きて水浴び ホテルに戻って水浴び 夜中に起きて水浴びと行水三昧の毎日でした  驚き ネパールってそんなに暑いの と思われる方が多いのですが もとよりネパールは奄美大島と同じ緯度にあります  そこに世界最高峰のエベレストがあるので 海抜が下がるにつれて暑くなるのです  様々な顔をもつネパール  ぜひ一度スタディーツァーにご参加ださい  今年の春は治安悪化でツァーを中止しましたが 秋はぜひ決行したいものです  何しろ1年ぶりのスタディーツァーです  今回はちょっと無理 という方は ぜひお友達にNBSAのスタディーツァーを紹介してください  よろしくお願いします 

 

日程などは  http://at.sakura.ne.jp/~ilte/nbsa/ をご覧ください

 

  活動報告 ネパールガンジで行った2大イベント

 

1 こどもの日クイズ大会

今年から8月20日のこどもの日が変更になったので カトマンドゥ大会は延期しましたが  ネパールガンジは会場の都合により 8月21日に行いました

NBSAカトマンドゥは毎年視覚障がい児童のクイズ大会を行っています  同等な教育を受ければ 目の不自由な子どもも同等な学力を持っていることを社会一般に呼びかけるこの催しも ネパールガンジで4回目を迎えました  今年のネパールガンジ大会には西部5つの郡 カイラリ バケ バルディア スルケット ダン から各2名が参加して競い合いました  どの学生も思いのほか優秀で 接戦の末 スルケット郡のシカール学校が優勝しました  勝敗に関係なく どの学童も自信と誇りを抱いて帰路についたことでしょう  この大会は地元の新聞とFMラジオで放送されました  NBSAが掲げている 社会的差別を撤廃し共に生きることを目指す よいイベントだったと思います  なお ネパールでは非常に珍しい点字の絵本や 貴重な日本製のポータブル点字器セットを 賞品として配りました  ご寄贈くださいました支援者の方々に厚く御礼申し上げます

 

2 視覚障がい児童の親へのセミナー

ネパールガンジで行った親へのセミナーは 簡素な会場でしたがオープンなムードで行いました  何しろ全員が床にじかに座ってお互いの顔を見ながら勉強をするのです  カトマンドゥでは障がい者の法律や将来計画など やや堅い話が多かったのですが ネパールガンジではまずは教育の重要性の話から始めました  お子さんが健康であった場合 先に逝くのは誰ですか お子さんですか お父さんやお母さんのあなたですか 暗くて相当シビアな話題です  みな驚いたようですが うちは家族が多いから平気 と意外に明るい答えが返ってきました  地方の人はのんきです  

 

とにかく きちんと学校へ通わせてください  身辺の自立を教えて なんでもひとりでできるようにしつけましょう を繰り返しました  セミナーの内容は叱咤激励が多かったのですが FMラジオのアナウンサーをしているカトマンドゥ支部長のオムさんの柔らかな声に どのお母さんもお父さんもうっとり  すごいなーラジオ局で働いて ちゃんと月給をもらっている盲人がいるんだ  とどこか明るい  オムさんの穏やかなムードもなかなか効果的でした  しかしNBSAのセミナーはこれで終わったわけじゃない  最後にかならず親同士の連帯を求めるのです  それが親の会の結成  みなが問題や情報を共有し 助け合って生きていこうよと呼びかけるのが私達の最終目的です  5郡の中から数人のお父さんとお母さんが役員に選ばれて とりあえず親の会が結成されました  

 

めでたし めでたし ということで私たちはカトマンドゥへの帰路につきましたが 実はフォローアップがすごく大変なのです  ネパールでは日本のような父母の会があるのは 有名な私立学校くらいで 親同士の交流が希薄です  カトマンドゥの視覚障がい児童の親の会も こちらが呼びかけてお茶と茶菓子を出して 会合に来てもらう といった状態です  ネパールの人々は親類や同じ苗字の人々の結束が強く 胸が熱くなるような助け合いの精神を発揮するのですが 同じ問題を抱えているというだけでは個人個人を結束させるのが非常に難しい  今後最西地のネパールガンジを中心に どのように親の会を育て上げるのか 実は問題山積み  頑張っていきたいと思います  

 

3 白杖2000人へ寄贈プロジェクト続行中  

昨年の11月の白杖寄贈式典を契機に 様々な場所で白杖配布活動を行っています  ネパールガンジにも白杖を持っている人は皆無でした  今回ネパールガンジに持ち込んだ白杖は150本 そのうち数本は即座に学生へ配りました  残りは盲人協会のネパールガンジ支部を通じて 様々な方々に配布されます  昨年来すでに多くの目の不自由な人々が白杖を受け取り 不便が解消されたことと思いますが 早々に2000本配布を達成したいと思っています

 

● 子どもの日いつになったの?

  

 日本の梅雨明けを待たず7月中旬カトマンドゥに向かいました  日本の蒸暑さに比べれば 昼間は暑くても標高1300mにあるカトマンドゥ 夜の涼しさは格別です  現地のスタッフやボランティアにも会いたいけど 何といっても最大の楽しみは8月20日に毎年行なわれているNBSA主催の子どもの日クイズ大会です  初回の2003年はカトマンドゥ近郊の3学校対抗クイズ大会でしたが 第2回の2004年はカトマンドゥ ポカラ ダラン ブトワールの各地を代表する生徒がカトマンドゥに集まり ネパール国営テレビのスタジオで録画し 全国放送をするという一大イベントとなり 参加する生徒たちも主催する現地スタッフも 初めての経験で大興奮だったことを思い出します    さらにこのテレビ放送は 2度も再放送されたと聞いて もっと嬉しくなりました  

 今年もまた あの興奮をと思って出かけたのですが 子どもの日が何となく怪しくなってきた  というのは4月の政変により今年は国王誕生日を祝わなかったそうです  それに伴い 国王の母つまり皇后の誕生日に設定されていた子どもの日も変更されることになってしまいました  子どもの日クイズ大会も当然変更 私の最大の楽しみも これでオジャン  

 でも今年で第5回を迎えるクイズ大会 各学校に出場の案内に行って思ったことは 生徒たちがこのクイズ大会をとても楽しみにしていることが分かったことです  このイベントが子どもたちに根付き始めているのを知り 現地のスタッフの努力が少しずつ実っていることを実感できました  

 8月中旬になると朝夕は肌寒さを感じるようになり 厚い雲に隠れていたガネシュ ヒマラヤがある朝突然姿を現し 私のカトマンドゥの休日も終わりました  子どもの日クイズ大会での現地の皆様の健闘を祈ります!

上田 佳代子

 

注 上田さん 遠路はるばる日本から応援に駆けつけてくれたのに 延期になって申し訳ない とスタッフが謝ってもしょうがないのですが  先ごろやっと新子どもの日が設定されました  今年は9月14日になります  来年はどうなるのか見当がつきませんが  それに合わせてカトマンドゥ スタッフも大慌てでクイズ大会に向けて再度の準備を始めました  会場の予約 横断幕の書き換え ボランティアの再編成などなど  祝日などは年間スケジュール通りに運ぶもの とばかり思っていましたけど ネパールってどうしてこうなるの? ふー 思わずため息が漏れる渥美でした

 

● ネパールの民話(8)猟師とトラ

ある日 ひとりの猟師が森でトリをしとめようとしていると 一匹のトラに会いました  トラが猟師に飛びかかろうとしたので 猟師はあわてて言いました  ひとつ提案がある お互いに傷つけあうのをやめて友達になろう と言うのです  トラはこのアイディアを気に入りましたが トラもひとつ提案しました  

「いいねー それじゃまずは俺の敵 ヤマアラシを殺してくれ」と  

「よしわかった」と猟師 

「そのヤマアラシはどこにいるんだね」と続けました  

「そいつは穴の中にいる  どこにいるか見せてやるよ」とトラが言いました  

トラはヤマアラシの穴に猟師を連れて行き ヤマアラシが穴から出てくるのを待ちました  ヤマアラシが穴から出てきたとたん 猟師は銃で撃ち殺しました  しかし トラは自分の敵を猟師に退治してもらったことを 誰にも知られたくありませんでした  トラは猟師に誰にもこのことを伝えないように頼みました  猟師はトラの言うことを聞いてやり ヤマアラシを家に持って帰りました  猟師の妻はこのヤマアラシで夕食を作りました  

翌朝 猟師の妻は水を汲みに出て行きました  妻は歩きながら竹の爪楊枝で歯をつついていました。泉にいたふたりの隣人が いったい何を食べたのか聞きました  そこで妻は猟師の夫が ヤマアラシを家に持ち帰ったことを話しました  こうして村人全員がヤマアラシのことを知ってしまいました  やがて トラ自身もこの話を耳にしました  猟師がまた森へ来たらヤマアラシを殺したことをみんなに話したので 殺してやろうと待ち構えていました  

「俺は何も話していない」と猟師が否定してもトラは聞き入れません  

「あんたが言ったかどうかが問題じゃない 俺はこの話が広まったためにあんたを殺すんだ」とトラは言いました  猟師は本当に怖くなってぶるぶる震えていました  

「どうして震えている」 トラはききました  

「怖いんです  こないだ食べたヤマアラシが私の体から出ようとしているんです」

「なんだって」

「ちょっと待って  ああ いま体から出そうだ」

これを聞いたトラは一目散に逃げて行きましたとさ 

 

注 ヤマアラシ

ネズミ科 毛色は黒褐色が多く 背から腰のとげのような剛毛を持ち 敵に体を振って音を出したり 刺したりします  昼間は穴に隠れ 夜 球根や根のほか動物も捕って食べます

 

   募金のお願い

これまでNBSAカトマンドゥ支部では カセットテープを一本一本デッキでダビングして貸し出しをしていましたが テープ借用者のニーズに迅速に応えることができなくなりつつあります  また毎日長時間ダビングを続けているので デッキ自体の故障が頻繁に起こるようになりました  そこでこのほどカセットテープのダビング専用の機械を購入することにいたしました  他団体も支援を行ってくださっていますが 目標額に達していません  そこでネットニュースの読者にも広く募金を募りたいと思います  皆様の緊急支援 どうぞよろしくお願いします

振込先:郵便振替 01790-7-74222(ネパールの視覚障害者を支える会)

通信欄に「ダビング機」と記入してください

 

● 特報  NBSA秋のスタディーツアー 参加者大募集

NBSAのスタディーツァーは毎回バラエティに富んでいる!

こう言って3度も参加した方がいます  ネパールの視覚に障がいがある人と共に登る アンナプルナ街道 そして学校や施設の見学もできます  お買い物の時間もたっぷりとってあるので カトマンドゥの庶民の生活に触れられるのも魅力のひとつ  とにかくおもしろい と評判です  ガイドボランティアもこちらで用意しますので 視力に障がいのある方も気楽に参加できます  おいでませ ネパールへ

 

編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住

2006年9月9日

 

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