―――  NBSAネットニュース 2006年10月号 ――――

 

ネパールの視覚障害者を支える会(NBSA)の会員 支援者の皆様

 

秋の大祭ダサインが終わりました  この祭り 私に言わせるとかなりダサイんですが 誰もがこれ以上ないほど楽しみにしています  特に今年はマオ派が戦闘をストップしているので アクセスが良くなり 大勢の人々が帰省し 故郷で祭りを堪能しました  ダサインの日取りは占星術師が決めますが 暑くもなく寒くもなく 毎年本当によい日柄を選ぶのが不思議です  NBSAカトマンドゥのスタッフは 年間行事計画の中で もっとも重要な2大イベント 親への啓発セミナーとクイズ大会が終了させ ほっと一息ついています  ダサインの休暇はネパールの官庁にあわせて 10日間とり 十分に英気を養ったので 次のステップに向けて頑張ります  皆様も秋の味覚を楽しむなり 読書にふけるなり 自然の恵みを満喫してください

 

 

●活動報告 視覚障害児童のための子どもの日クイズ大会 カトマンドゥ盆地編

 

本年度から 国民の祭日子どもの日が8月20から9月14日に変更されました そこでNBSAも子どもの日クイズ大会カトマンドゥ大会を 9月14日に延期しました  盆地内の4校から選手各3名それに応援団やボランティアを含めると 総勢80名のオーディエンスが集まり 大変盛り上がりました  

 

1位 ナムナマチンドラ校 カトマンドゥ ラガンケル 昨年3位

2位 サンジバンニ校 ドリケル 昨年4位

3位 ラボラトリースクール キルティプル 昨年1位

4位 アダルシャ校 サノティミ 昨年2位

 

昨年まで成績不振に終わっていた2校が 今年は上位にランクされ 名門校でトップを独走してきたキルティプルの学校が3位に転落  波乱万丈の結果に驚かされました  このクイズ大会の問題は公務員試験の問題を中心に構成し 大変難しいものなので 実は事前に問題をカセットテープに問題を吹き込み 各学校に配っておきました  それも90分テープ4本という膨大な量です  1位のラガンケルの学校では 毎日最低1回はテープを学生に聞かせていたそうです  教師の熱意しだいで子どもはここまで伸びるものと  教育の重要性をあらためて実感しました  

 

この恒例のクイズ大会は今年で4年目  地方の校内予選会を含めると9回目になりました  今年の盆地内大会では 何度も出場している学生同士交流をもつようになり これも素晴らしい光景でした  またこれまで出場者の引率がボランティアだったこともありましたが 今回はどの学校の教師も 自ら学生を連れてくる 出場者の学生は誇りをもって制服で参加する などが大きな特徴で学生も教師もますますこの行事に関心を持ってきた様子がうかがわれました  こうなれば来年もやるっきゃない  スタッフ一同ますます熱意に燃えています  

 

 

●初めてのネパール  高橋 しのぶさんからご投稿願いました

 

9月下旬 私は初めてネパールを訪れ カトマンズに1週間ほど滞在した  滞在中にNBSA事務所にお邪魔する機会があり アドバイザーの渥美さんにもお世話になった  

カトマンズの街の中は車のクラクションの音があふれていた  日本人の友人の話では ネパール人は前の車が止まると 理由も確かめずにとりあえずクラクションを鳴らすのだという  加えて 私の訪れた時期はダサインという大きな祭の直前で カトマンズの街は日本の年末のアメ横をさらに無秩序にしたような賑わいだった  食品でも衣料品でも装身具でも 日本人の目にはとにかく安い  ゼロを付け忘れているのではないかと疑いたくなった  ごった返した人ごみを外国人が歩いても 比較的安全なのが意外だった  私が食べたネパール料理は基本的にどれもカレー風味だった  日本のカレーとはだいぶ趣が違い ご飯に豆のスープをかけ 炒めた野菜や 煮たり焼いたりした肉を混ぜて食べる  山羊やヤクの肉も出てくる  ビールによく合う  現地の人は手で食べるのだが これがなかなか難しい  指の間からぽろぽろこぼしてしまう  皆さんにも一度お試しいただきたい

 

 

高橋さん楽しいレポートありがとうございました  初心者向け カトマンドゥガイド編といったところですね  またNBSAをご訪問ください

 

 

●ネパールの民話(9)3人の姉妹 今回は長編です

 

昔むかし 3人の姉妹がいました  両親が死んで この世界に姉妹の持っているものといえば 白いヤク(ヒマラヤ牛)だけでした  ある日姉妹はそのヤクさえも逃がしてしまいました  

そこで 長女がヤクを捜しに行くことになりました  一日中 長女は山から山へと登りました  最後に長女は人食い鬼の住む土地に着き 年取った醜い人食いの老婆に会いました  

「おばあちゃん うちの白いヤクを見た?」と長女はたずねました  

「ああ 来たよ  いまここにいるよ  でもあんたは疲れているし それに腹をすかしているようだね  ゆっくりしておいき」と老婆は言いました  

もう日もとっぷり暮れて 本当のところ長女はとても疲れていたし おなかもすいていました  そこで長女は老婆の招きにあずかることにしました  

人食いの老婆は長女の前に皿いっぱいのご飯を置くと 長女を殺して食べる支度をするために山を下りて行きました  少女がご飯を食べていると1匹の白い犬が来て言いました  

「僕にご飯をひと口くれれば いいこと教えてあげるよ」

犬が同じことを2度も言いましたが 少女は無視しました  

「お前のような犬が いったい何を教えてくれるっていうのよ」

こう言って 長女はご飯をすっかりたいらげてしまいました  

 

やがて人食い鬼の老婆が戻り 長女を部屋の隅に寝かせました  老婆はその部屋の梁(はり)に石臼をくくりつけておいたのです  しばらくして 部屋の中がすっかり暗くなってから 老婆は戸口に座っている犬にききました  

「星はもう出たかい」

「まだだよ」と犬は答えました  

しばらくして老婆はまたききました  

3度目に老婆が尋ねると犬は星が出た と答えました  

それを聞いて老婆は梁にくくりつけておいた石臼の綱を引きました  長女は可愛そうに石臼につぶされて死んでしまいました  人食い鬼の老婆はすぐに長女の死体に飛びかかり 骨まで食べつくしてしまいました  

 

 次の朝 長女が家に戻らなかったので 次女が姉とヤクを探しに行きました  次女も丸1日歩き続け 姉を食べてしまった人食い鬼の老婆の家にたどり着きました  

「おばあちゃん 私のお姉さんとヤクを見なかった?」と次女もたずねました  

しかしこの次女も お姉さんと同じように食べられてしまいました  

 

ふたりの姉が戻らないので 末っ子の少女がふたりの跡を追って探しに出かけました 日が暮れて 1日が終わりに近づいた頃 末っ子の少女は人食い鬼の老婆の家を見つけました  

「おばあちゃん 私のふたりのお姉さんとヤクを見なかった?」

「ああ 見たよ」

老婆は答えました  

「でもあんたはおなかがすいているね まずはご飯をおあがり」

と言って 老婆は少女の前に皿にいっぱいのご飯を置きました  そして老婆はいつものように 小川に沿って山を下りて行きました  

少女がご飯を食べようとすると 犬がやってきて言いました  

「ねぇ ひと口ご飯を食べさせてくれたら いいこと教えてあげるよ」

少女が犬にご飯を少しやると 犬はあっという間にたいらげてしまいました  

「あとひと口食べさせてくれたら もっといいことを教えてあげるよ」

と犬が言いました  犬は少女からまたご飯をもらいました  犬が3度目のおかわりをねだったときにこう言いました  

「もっとご飯をちょうだい  そしたら知っていること全部教えてあげるよ」

そこで少女は犬にご飯をすっかりあげてしまいました  犬はご飯を全部食べ終わるとこう言いました  

「本当はふたりのお姉さんたちはここに来たんだよ  でも悪い人食い鬼のばあさんが お姉さんたちを殺してすっかり食べてしまったのさ  だから君はここにいちゃだめだよ  でも逃げる前に竹の櫛 アワやヒエ トウモロコシ 米 小麦と大麦をもてるだけ持って行って」

少女はびっくりしましたが 大急ぎで持てるだけの物を持ち 闇夜の中を走りました  

 

やがて人食い鬼の老婆が戻り 少女がいなくなっていたのでひどく怒りました  そして老婆は犬を殴り殺し 少女を捕まえようと大急ぎで道を走って行きました  少女は老婆が後を追ってきたのに気がついて 櫛を地面に投げつけました  すると櫛は大きな茂みに育ち 老婆の追跡を遅らせました  老婆がやっとこ茂みから抜け出したときには 少女は老婆からかなり遠く離れていました  しかし 人食い鬼は驚くほど速く走って少女を追いかけてきました  

 そこで 少女は持ってきた雑穀を捨てました  

「ああ なんてこったこれは全部わしのもんじゃないか」

と老婆は叫び 道沿いに散らばっている雑穀を拾い始めたので すっかり時間を食ってしまいました  

 

 その間に 少女は別の山まで逃げましたが 人食い鬼の老婆はあっという間に追いつきました  そこで少女はトウモロコシを投げつけました  老婆はトウモロコシを拾うためにもう1度止まりました  老婆は全部拾い終えると 前にもまして早く走りました

そこで少女は米を捨てました  

 

老婆が米を拾っている間に 少女は別の山の峰に着き 小麦を撒き散らしておきました

 

  やがて 老婆は小麦が捨てられているのを見つけました  

「ああ こりゃわしの小麦じゃないか」

と言って小麦を拾い集めましたが とても時間がかかりました  

 

少女はさらに別の山に着きました  しかし振り返って見なくても 足音で老婆が近づいているのに気づきました  少女は急いで大麦を捨てて 一生のうちこれほど走ったことがないほどの速さで走りました  老婆は今度もまた大麦を拾うため足を止めましたが 拾い終えると 一生のうちこれほど走ったことがないほどの速さで走りました  

 

少女には もう老婆をとどめる物が何もありませんでした  

「天の神様 どうか私を助けてください  人食い鬼の老婆がもうすぐ私を捕らえてしまいます」

と少女は祈りました  まさに老婆が少女を手にかけようとする寸前 するりと1本の綱がおりてきました  少女はこの綱が悪い人食い鬼から自分を助けてくれるものだとわかり 綱をつかむと 綱は天に向かって引き上げられていきました  

 少女が雲の中に消えたのを見て 人食い鬼はひざまずき叫びました  

「おお 親切な神様 私のためにも綱を下げてください」

「なんだね わしはたったいま起きたところだよ」

と 空の上から声が聞こえました  

「私に綱を下ろしください」

と人食い鬼はお願いしました    

「いま服を着ているんだよ」

と天国の神は言いました  

「お願いです  早く私を引き上げてください」

と老婆は言いました  

「いま火をおこしているところだ」

という声が聞こえてきました  

「お願い お願いです」

と老婆はたのみます  

 

すると1本の綱が老婆の前に下りてきました  老婆が綱を握ると 綱は引き上げられていきました  しかし老婆が天国への道のりの半分しか行かないうちに 綱は切れてしまい

 人食い鬼の老婆は石ころのように落ちていきましたとさ  

 

 

●お蔭様でダビング機を購入できました

NBSAネットニュース9月号で「●募金のお願い」を掲載しましたところ、購入希望の高速カセットテープダビング機の購入価格をわずかに不足するも多額の寄付金が集まり、NBSA予算から不足分を支出することで予定通り購入できました。11月中旬にはカトマンドゥへ搬入できることになりました。ご協力ありがとうございました。

 

 

NBSA2006年秋のスタディーツアーは、参加応募者が最少実行可能人数に満たなかったため、中止させていただきました。

 

 

 

編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住

2006年10月22日

 

 

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