―――  NBSAネットニュース 2006年11月号 ――――

 

ネパールの視覚障害者を支える会(NBSA)の会員 支援者の皆様

 

光の祭りティハールが終わり ネパールはすばらしい秋を迎えています  暑くも寒くもなく バクタプルの高台からは遥かなるヒマラヤを望み 蒼穹の下 刈り入れの終わった田には 落穂を拾う人々が冬至までの短い間に精を出して働く姿があります  また旧ネパール暦といわれるネワールの暦では 今年の10月23日で1127年を迎えました  のどかな毎日ですが 私たちカトマンドゥのスタッフも 冬を前にして益々精進するよう励んでいます

 

●11月15日 ダビング機到着のご報告

ネットニュース9月号でお知らせしましたように カセットテープのダビング機を購入しNBSAカトマンドゥ支部に届けられました  募金のご協力ありがとうございました

 

●活動報告 ヒアリング(聴聞会)と カセットテープ貸し出しステーションに向けての調査

 

11月11日 ダビング機の到着に先立ち カセットテープ ライブラリーのユーザーとボランティアを交えて 第1回目のオープン ヒアリングを行いました  ユーザーの盲学生や在宅の目の不自由な方々に これまでNBSAが作製したカセットテープ小説などの批評と評価をしてもらい 今後の活動に結びつける というのが目的です  当日 NBSAカトマンドゥ事務所に30名近いユーザーとボランティアが集まり ネパール式に床に座って自由討論を行いました  朗読の未熟さなどが指摘されましたが 一番議論になったのは 今後どのような本を優先して作るかで 学生は教科書を希望し 在宅者は小説の充実化を求めるなど 各々の立場の違いでニーズが違っているのが明らかになりました

小説の方がポピュラーですが 学生の教材作成にも最大限の努力をする ということを約束いたしました 

 

また 同日ボランティアのアンケート調査も行いました  これはカセットテープ ライブラリー事業の新しい企画で テープ貸し出しの便宜と拡張を図るステーションの開設に役立てるためです ボランティア各自が自宅や勤務先の付近に在住するユーザーに テープを届け回収する作業をお願いするための 資料を作成しました  将来これらのボランティアに カセットテープ貸し出しステーションの一員として 活動してもらう予定です  

 

上記ふたつの議題についての話し合いは2時間ほどで終わりましたが 初めてのヒアリングということで 皆緊張したのか あまり活発な討論が展開されませんでしたが 出席者の比率は 驚いたことにユーザーがボランティアを上回り NBSAのカセットテープ ライブラリーに寄せる期待が いかに大きいかをうかがわせました  今後もこのようなユーザーの声を聞く機会を積極的にもちたいものです

 

●ネパールの行方 

11月8日未明 21時間に及ぶ政府とマオ派のサミット会談が終了した  地元紙の朝刊には 歴史的合意 10年に及んだマオ派との和解など 和平に向ける会談を評価する記事がつらなった   平和へのタイムテーブルは以下の通り

 

1116日 包括的和平協定に署名

1121日:暫定憲法発布

1126日:暫定議会の発足

121日:暫定政府の発足

 

暫定政府の構成は330議席  うち与党第1党のネパール会議派75 ネパール統一共産党73 ネパール共産党毛沢東主義派が73席を占め 現首相のG.P.コイララが暫定政府の首相となる  

 

毛派の武器は21日までに国連の監視下で封印され 兵士も宿営地に封鎖される  王室財産は国有化または財団保有へ移行される  君主制については憲法上の権力の剥奪以外 最終決定には及んでいないが 来年6月の制憲議会選挙で国民投票により決着をつける公算が大である  合意を受けとめて マオ派はネパール各地で戦勝記念大衆集会を大規模に行った

2006年11月13日

 

その他のニュース  ヒンドゥー教の大祭 ディワリを祝う帰省ラッシュでバス転落 42人死亡

10月28日 ネパール中西部サリヤン郡の山間部でバスが道路脇の川に250メートル転落し 42人が死亡し 45人が重傷を負った  バスには定員を超オーバーする100人以上が乗車し カーブを曲がりきれなかったのが原因  ネパール国内でバスの安全性を問う議論が渦巻いた  

 

     冬ソナ イン ネパール  毎週木曜日の午後9時はこれ

 

テレビドラマの冬ソナがネパールでも放映されている  当地のタイトルは雪の恋  なんとも甘いタイトル  見合い結婚がほとんどのネパールでは こうした自由恋愛ものは必ずヒットする  毎週30分のドラマに若い人は釘づけ  とにかくすごい人気です  きのう見過ごした 続きはどうなったの という電話が自宅にまでかかってきたほど  実はこの人 冬ソナは日本のドラマだと思っていたそう  またユージンだれと結婚するの? お願い先を教えてよとか あのフランス帰りの彼氏 あれは死んだはずの彼が本当は生きていたんでしょう? とヨン様はここでも女の子に爆発的にもてている  

でもネパールのおばさん達は日本のように騒いでいない  時の流れが日本とネパールでは違うからかな?  これまで踊るマハラジャのような コマ送りの早いチャカチャカしたヒンディー映画ばかりがウケていたネパールで こんなにしっとりした映画はなかった  脅威の冬ソナ もとい雪の恋 解凍はいつになるのだろう

 

●ネパールの民話(10)猿と蛙  

ある日 1匹の猿が梨の木に登って梨をもぎとって食べていました ところが 梨は落ちて転がって行き小川でおばあさんが水を溜めている桶に落ちました  猿はおばあさんにたずねました  

 

「おばあちゃん 梨を見なかった」

「ああ 見たよ」

とおばあさんは言いました  

「でも坊や もう食べちゃったよ  うちにおいで そのかわり何かあげるからね」

そこで猿はおばあさんといっしょに おばあさんの家へ行きました 

おばあさんは猿に お米とトウモロコシのプリン どっちが好きかたずねました  

「お米をください」

と猿は言いましたが お米の代わりにトウモロコシのプリンが配られました  

「牝牛と牡牛 どっちがほしい」

とおばあさんは聞きました  

「牝牛」

と猿は言いました  おばあさんは猿に牡牛をやって 家に帰しました 

 

翌朝 蛙が同じ梨の木の下に来ました  蛙は木に登り 梨をもぎましたが落としてしまいました  おばあさんはこの日も小川に水を汲みに来ていて 流れてきた梨をすくって食べました  やがて 蛙はおばあさんのところに来て 梨を見たかとたずねました  

 

「ああ 見たよ」

とおばあさんは言いました  

「でももう食べたよ  うちにおいで その代り何かあげるから」

そこで蛙はおばあさんといっしょに おばあさんの家へ行きました 

おばあさんは蛙に お米とトウモロコシのプリン どっちが好きかたずねました  

「トウモロコシのプリンをください」

と蛙は言いましたが おばあさんはトウモロコシの代わりに お米のプリンを食べさせました 

「牝牛と牡牛 どっちを連れて行く」

とおばあさんは聞きました  

「牡牛を連れて行く」

と蛙は言いました  おばあさんは蛙に牝牛をやって 家に帰しました  

 

猿は家に帰るとすぐに 牛が子どもを産むだろうと考えましたが 自分の夕飯の支度にかかりました  蛙も同じように考え 牛の陣痛が始まったと思い 牛に与える草を取りに行きました  蛙は猿の家の前を通り過ぎるとき 牛はどうしているかと訪ねた  猿は蛙に じき俺の牛が子どもを産みそうだといいました  これを聞いて蛙は笑い転げ 出産するのは俺の牝牛だけだよ と言いました  2匹の動物の間ですごい喧嘩になり  ついに 2匹は決着をつけようとキツネのところへ行きました  しかし キツネは2匹の言い分を聞いている間 ずっとうつらうつらしていました  猿がキツネを起こすと キツネは自分の見た夢のことを話しました  

 

「むにゃ むにゃ  おれがちょうど川を渡ろうとしているときだった  すると 川がぼうぼうと燃えているじゃないか  川の奴め 魚を手っ取り早く料理しようと 川を燃やしていたんだよ  その魚ったらすごい量なんてもんじゃなくって 見ていたら思わず眠くなっちまったのさ」

 

「まさかねー いったいどうやって川の流れが燃えるっていうんだい」

と 猿が尋ねました  

「いやー これは本当の話なんだよ」

とキツネは言いました 

「じゃ ひとつ聞くがいったいどうやって牡牛が出産するのかね」

おしまい おしまい

 

今回もおばあさんが登場しましたね それもへそ曲がりでいじわるなおばあさん  どうやら謙虚だった蛙が得をしたようです  それに今回の民話 漢字力を試すテストのようでした  英語でも牛一般をCowと呼びますが ネパール語のGaiも同じように使われる場合が多いようです

 

編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住

 

2006年11月17日

 

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