―――  NBSAネットニュース 2006年12月号 ――――

 

ネパールの視覚障害者を支える会(NBSA)の会員 支援者の皆様

ひと足先に年末の挨拶をさせていただきます  今年も皆様のご協力をいただき ネパールの視覚障がい者の福祉を一段と向上することができありがとうございました  室内や車両に暖房設備がほとんどない ネパールでは 冬場の活動は厳しいものです  NBSAカトマンドゥ事務所にはガスストーブを入れていますが 日の当たらない録音スタジオで働く朗読ボランティアさんが よくひなたに出て 朱色に熟したみかんを食べたり 新聞を読んで暖をとっています  ネパールならではの のどかな光景で 苦あれば楽あり 穏やかな日々を送っています  日本の寒さはこれからが本番ですね  皆様にはカゼなどひかれませんよう よい正月をお迎えください

 

●活動報告

 

12月2日 ボランティアへの感謝祭 

12月5日は国際ボランティアデーです  それに先立ちNBSAカトマンドゥ支部では日頃お世話になっているボランティアさんを呼んで ドリケルでピクニックをしました  バスを一日貸し切り 総勢52人が参加しました  NBSAカトマンドゥのボランティアを大別すると 朗読などのカセットテープ作成ボランティア 点字マガジンのボランティアと 目の不自由な人々の歩行をサポートするボランティアがいます  特にレギュラーで事務所に来る朗読ボランティアの努力は 並々ならぬものがあり この機会に労をねぎらいました  ドリケルからヒマラヤが一日中見え 山道をゆっくり歩いたり 踊ったり歌ったり本当に楽しい催しでした

 

12月3日 国際障害者の日 

ネパールの社会福祉協議会と ネパール全国障害者連盟共同主催のデモ行進と式典に参加しました

今年のスローガンは 障害者の独立した生活の保障などを訴えるものが多かったのですが NBSAは白地の横断幕に緑色で わたしたちは国際障害者の日に平和を希求する という文言と鳩をあしらったものを掲げて カトマンドゥの目抜き通りを行進しました  最後の式典で 女性児童社会福祉省の大臣から参加と活動に対する感謝状が授与されました 多数の障害者団体がこの感謝状をもらったのですが NBSAもノミネートされていたので スタッフ一同驚きそして感激しました  

 

11月と12月 使用済み衣類の配布 

恒例になったNBSAの越冬支援を今年も行いました  カトマンドゥを訪れた人々が 置いていったものや一般市民からの使用済み衣類を回収し 今年も南ネパール2箇所の視覚障がい者団体に送りました  南ネパールは冬になると ヒマラヤを越すことのできない雲が時には1ヶ月も停滞し まったく日が射さなくなるのです  2年前の寒波は特にひどく大勢の人が凍死しました  1月初旬にあと1箇所の配布を計画しています  ご協力ありがとうございました

 

●ネパールのニュース 

12月11日 マナスル登頂50年 カトマンズで記念式典 

1956年5月 世界8位の高峰マナスル 標高8163メートルは 日本山岳会隊の登山隊により初登頂された  今年は50周年にあたり 11日にカトマンドゥ市内で盛大なパレードと式典が行われ テレビニュースなどで大きく報道された  この催しはネパールの観光局が特に力をいれ  ここ数年低迷を続ける日本人観光客の伸び率の回復を図った意味合いもある   56年当時は欧州各国などが競って8000メートル峰への初登頂をめざしたが マナスルは初めて欧州以外の登山隊が初登頂を果たした8000メートル峰となったため ネパールではアジアの登山隊が初登頂したことへの誇りが強い  また 日本山岳会の平山善吉会長が 登頂成功は敗戦で打ちひしがれた日本人に夢を与えた と語ったことも印象的であった

 

12月16日 暫定憲法で政府とマオイスト派合意

連日連夜 ネパールの政府を構成する7政党と マオイスト派の暫定憲法に関する協議が行われていたが 1ヶ月近い遅延の末 16日未明合意に達した  暫定憲法によると5月の民主化要求デモ以来 権限を縮小されていた国王の政治的権力が完全にはく奪され 現首相が全権を掌握することになる  また 長きに亘り反政府闘争を展開していたマオイスト派を 政府に取り込むことも合意され 順調に行けば年内にも暫定憲法が発効される  しかし国王の法的地位に関しては合意に至らず 来年6月に選出予定の制憲議会がつくる恒久憲法で規定されることになる  

 

●変わりつつあるネパールの市民 国民・公民権

ネパールではいまだに住民登録制度や国籍法がきちんと整備されていない  個人の身分を証明するときに英語のCitizenshipという言葉をそのまま使われることが多いのだが それはむしろ日本の戸籍制度に近く 遺伝学的に家父と認められる者が市民もしくは国籍の筆頭者になる  

 

しかし子供が生まれても知識がないため登録をしない少数民族は例外として カーストに基づく地位の差により 戸籍や市民 国民・公民権の取得が許されない人々がいる  かれらはネパールに生まれながら いまだにネパール人として認められていない無国籍の民である  

 

1990年の民主化運動ではこの部分には触れなかったが 90年の後半になり 当事者でカースト的地位の低い タライ平原に多く住むタルー族や ジャングルを移動して生活している狩猟 採集民族 さらにネパール国内外の人権団体がこの不平等と矛盾を改善しようと 立ち上がり始めた  

 

さらに これまでは家父の代からネパールに住んでいる者だけが ネパール人と認められていたが これだと代々インドとネパールを行き来して生きている人々が無国籍になってしまう  そこで 家父長制の市民 国籍権を廃止し いわゆる英米のようなシチズンシップ 市民 国民権の改正が 新憲法に盛り込まれる可能性がある  この草案が採用されると インドとの国境地帯マデシュに住む人々でも ネパール国籍を取得できるようになる  また ミャンマーなど外国に住む者で 父親 または母親がネパール人であれば 家父でなくとも子供はネパール国籍が取れるようになる  

 

インドも同様な問題を抱えているため 無国籍の民が大勢いる  お釈迦様の出身地や活動地帯だった カピルバストゥー ビハール カラパニ などの住民は  無国籍でいるよりネパール国籍の取得を希望するようになる  そうなると人口がかなり増加する  さらに1990年以来ネパールに住み ネパール語が堪能であれば 誰もがネパール国籍を取得できるようにするという案もあるのだが 政治的に微妙な立場に立たされているブータン難民などは 例外になる可能性がある  ブータン難民については他の機会で紹介したいが ネパールには 島国に住んでいると理解しがたい複雑な問題が 多々横たわっている 

 

● ネパールの民話(11)ネズミ

あれ どこかで読んだことがあったかなぁと感じるお話  今月号のネパールの民話は笑っても泣いても 年は暮れていく といった感じの庶民っぽい感じのほっとするお話 やれやめでたし めでたし

 

昔あるところに一匹のネズミがいました  ネズミは王様の娘以外どんな女の人とも結婚したくないと思っていました  そこでネズミは王様のところへ行き お姫様との結婚を申しこみました  

「王様 あなたこそこの世で一番強い方です」

しかし王はこう言いました  

「私ではないよ  太陽は私より強いのだ」

 

 そこでネズミは太陽のところへ行き こう言いました 

「あなたは王様より強いでしょう  あなたの娘さんと結婚させてください」

「いや 雲は私より強いよ」

と太陽は言いました  

 

次にネズミは雲のところに行き こう言いました 

「私に娘さんをください あなたは太陽より強い方ですから」

「わたしはそんなに強くないよ 風はわたしを吹き飛ばす  風はわたしよりもっと強いのだ」

と雲は言いました  

 

ということでネズミは風のところへ行き 風の娘と結婚させてくれとお願いしました  

「いいえ 私はあなたが思うほど強くありませんよ」

と風が言いました 

「わたしが力いっぱい風を吹いても わたしには地に生える草を吹き飛ばすことができないのです  

草はわたしよりもっと強いのです」

 

それを聞いてネズミは草に 草の娘と結婚したいと申し出ました  ところが草はこう言いました 

「ネズミは私の下に穴を掘り 根をだめにして私を殺します  わたしはネズミにやめさせることができません  だからネズミのほうがわたしより強いのです」

 

ねずみは今はっきりわかりました  この世でネズミほど強いものはいないのです 

そこでネズミはネズミの娘と結婚しましたとさ  

 

編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住

2006年12月17日

 

 

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