―――  NBSAネットニュース 2007年2月号 ――――

 

ネパールの視覚障害者を支える会(NBSA)の会員 支援者の皆様

 

今年のネパールは暖冬で ヒマラヤでの降雪量がいたって少なく 全土が大変な水不足に見舞われています  水力発電しかないネパールでは 同時に計画的な停電が実施されてきましたが 今年は発電量不足が特にひどく 2月13日よりカトマンドゥでは毎日6時間の停電が実施されています  

NBSAカトマンドゥ支部の活動も 大打撃を受け カセットテープ ライブラリーの作成や 点字マガジンの出版が思うようにはかどりません  高度な機材が揃っても それを動かす電力がないのです  またカトマンドゥではガソリンやガスなどの燃料も少ないのですが 高級外車が増え プロパンガスでの炊事が普及しつつあります  燃料が尽きればこれも終わり  物資は溢れているのだけど 肝心要のインフラがかなり立ち遅れているのがネパールの現状です  このような気候が来年も続けば ネパールでは 2008年から毎日12時間の停電を余儀なくされるということ どうにか地球の温暖化に歯止めをかけられないものでしょうか 

 

●活動報告 1月24日と25日 男子学生への生活自立訓練会 16名が参加

1年半ほど前の 青少年を対象に行ったプログラムの復刻版ですが 今回は男子の大学生を対象に行いました  カトマンドゥ盆地内のサノティミ キャンパス校内で 約20名の盲学生が寮生活を送っています  長い冬休みの間にぜひ生活訓練を受けたいという声が上がり 基本的な日常生活上の技術を再確認してもらいました  ネパールの視覚障がい者の中で 大学に進学できる人は極々わずかです  後輩のよき見本となり スマートな社会人になってくださいと激励し 訓練会の幕を閉じました 

 

二日間で行った訓練の項目  手をきれいに洗う方法  歯磨きクリームの扱い  髭剃り  爪切り  身だしなみ  靴磨き  アイロンのかけ方と衣類のたたみ方  金銭管理  サインの仕方 室内の移動 丁寧な挨拶 など

全体を見た感想ですが 基本的な日常の作業があまりに下手で唖然としました  要望の高いプログラムですので 今後も機会があれば生活自立訓練会を行いたいと思います  

 

●ネットニュースと会報誌で 録音機能つきのウォークマンの寄贈を お願いしていますが  1月と2月に分けて合計43台を 東京都桑都ライオンズクラブから賜りました  盲学生の貴重な学習教材です 本当にありがとうございました 他に南ネパールに送る衣類や かわいいおもちゃもいただきました  下記はカトマンドゥ事務所を訪問された 代表の村山ご夫婦の感想文です  

 

●古希の記念旅行にネパールを選びました

日本人に生まれて良かったと思う処 政府は何をしているのかなと感じる処 この全てを包み込んで静かに見守っているような美しい山々 真っ赤な丸い太陽 人々の優しい目 そして帰国日に目的の盲目の大学生にウォークマンを渡す時間がきました  
事務所に訪ねますと すでに皆さん待機されておられ 静かに歓迎して下さいました  ウォークマンを1人1人手渡しますと 大変喜んでくださり 早く操作をしたい 早く音を聞きたい という感情が動作に表れ感激いたしました  ウォークマンの中に入れておいたカセットは歌が入っている品もありましたが音無しもあり 失敗したなーと申し訳なかったです  音の出ない人は表情が淋しそうでした  音楽を聞くと 自分達の歌を口ずさみ 踊りだした学生達もおられ当方も感激しました  
その姿を目にして 又 ウォークマンを集めて少しでも喜んでもらえる人達に渡したいなー そして 勉強しカトマンドゥのために国を清潔にし 向上してもらいたいと感じました  次回は日本の唱歌を吹き込んでおこうと思います  (村山満&スミエ)

 

●ネパールのニュース

1月17日 国連の監視の下 マオイスト派の武器解除が開始された

1月23日 日本国政府は武器解除及び6月予定の政権議会選挙の監視に 自衛官を数人派遣する方針を決定  それに先立ち現地調査団を31日から1週間現地に派遣した 実現すれば 防衛省発足後初の自衛隊海外派遣となる 

 

1月中旬マオイスト派を包括した暫定憲法は発布されたものの インド国境付近 東部 中部タライ地域では タライ人民の権利フォーラム (マデシ ピープルズ ライト フォーラム)によるタライ地域の独立と権利要求 暫定憲法に対する抗議行動から端を発した通行車両 政府関係施設に対する放火 治安機関との衝突(発砲も含む) マオイストとの衝突等が発生し 多数の死傷者が発生する等 同地域の治安情勢が悪化している  コイララ首相は事態を収拾するため 1月31日の国民向けテレビ演説で制憲議会選挙以降 ネパールを連邦制に移行することを表明  さらに主要7政党とネパール共産党毛沢東主義派との協議を経て2月7日 新たな議席配分を明らかにした  暫定憲法を修正し 全国75郡のうち人口の48・4%が集中する平野部の20郡に49%の議席を割り当てることを決めた  フォーラムの指導者は政府の決定を前向きであると評価したものの 自治権の問題などが未解決であり 政府への抗議行動は今日まで続き 2月15日は首都カトマンドゥで バンダ (ゼネスト) が決行された  ここ3週間 タライ地域から首都圏への輸送が不定期になり ガソリン 灯油 ガスなどの不足で市民生活が困窮をきわめている  また タライの運動の煽りで 諸民族の団結が強まり 同じような抗議活動が展開される可能性もあり 6月予定の選挙の延期が予想される 

 

2月14日 カトマンドゥでは 62年ぶりに雪が降り 暖房燃料不足で震える中 若い市民のバレンタイン ムードが一層華やいだ

 

2月16日 シバ神の降臨祭 シバラートリーで祭日 

余談:ここの人はいったいいつ働くのだろうか?そして労働の権利の集会はないのだろうか?

 

●ネパール関係新刊案内

文庫本  タイトル ネパール王制解体 著者 小倉清子 NHKブックスのシリーズ1075 2007年1月30日発売 サブタイトル 国王と民衆の確執が 生んだマオイスト 

以下著書の帯より引用  山深い秘境 マオイスト拠点村への単独行取材による 迫真のドキュメンタリー  中世さながらの絶対王制を目指す国王VS毛沢東主義武装革命を目指すマオイスト

 

写真集 A people war 人民戦争  Images of the Nepal conflict 1996 - 2006

目をそむけるたくなるような壮絶な戦いの記録とともに 瞬時にして消え失せる 歴史の陰に生きた名も無き人々を捕らえた秀作写真集  生きていくことはこんなに悲しいのか と何度も目頭を押さえた  上述の小倉氏の写真も数枚掲載されている 

お求めはカトマンドゥ タメル地区の書店で  2500ルピーとやや高めだが装丁もきれい

 

●ネパールの民話 15 祈祷師の墜落

むかしあるところに偉大なラマ教のお坊さんがいました  このお坊さんがインドへ経典を取りに行く前に 自分がいない間村人の霊を守ってくれるよう 祈祷師にお願いしました

お坊さんは予定通りに戻りました  村の近くに着いたとき 祈祷師が死んだ人への供養をしているのを見ました  お坊さんは木の下に腰をおろし 祈祷師がどんなことをしているかさぐるために弟子を送りました  弟子が戻り 祈祷師は経典も読まずに葬儀を行っている と報告しました  

「それで、遺体はどうなっているのかね」

とお坊さんは尋ねました  

「祈祷師は遺体を笑わせ 踊らせ ご飯を食べさせようとしています」

と弟子は答えました  

「なに 本当か」

とお坊さんは叫びもう一度行って 祈祷師をここに連れて来いと命じました 

弟子が再び行ってみると 祈祷師は死体が思うように動かないので 腹を立てているところでした  なぜなら 急に遺体が冷たくなって 動くことなく横たわっているだけだったからです  弟子が祈祷師にお坊さんのところは来てくれと頼むと いきなり祈祷師は怒りだしお前を殺すと脅しました  

「なぜ私を殺したいのですか  私はあなたをお坊さんのところに連れに来ただけではないですか」

と弟子は言いました  しまいに 祈祷師はしぶしぶお坊さんのところへ行きましたが 祈祷師はお坊さんと勝負したいと言い出しました これで誰に一番力があるかわかると言うのです  

「ご随意にどうぞ  私を試してください」

とお坊さんは言いました  

 「それじゃ あした朝日に触れることができた者を勝者としよう」

と祈祷師は言いました  

「それで結構」

とお坊さんは言いました  

 

翌日の朝 祈祷師は礼服と鳥の羽の帽子をかぶり 片手に太鼓 片手に祈祷師の杖を持ち さっそうと太陽に向かって飛び上がりました  そのころ ラマのお坊さんは起きだし 弟子にあの祈祷師はどのくらい高く飛んでいったか見てきてほしいと頼みました  弟子は窓から祈祷師を見て 雲に近づいていると伝えました  次に お坊さんはお茶を沸かして飲みました  そしてお坊さんは弟子に 祈祷師がどこまでいったかもう一度尋ねました  弟子が祈祷師は太陽に近づいていることを告げると お坊さんは弟子に香炉を持ってきてほしいと頼みました  

 

香炉が運ばれお坊さんがそれに息を吹きかけると もったりした煙がたちました  煙は窓から流れ空に昇っていきました  煙は祈祷師に届くまで高く昇って行きました  煙は祈祷師の目をつぶし まとわりついて祈祷師を地上まで引きずり下ろしました  祈祷師はイラクサの繁みに墜落しました  それ以来 どんな祈祷師もイラクサを食べなくなりました  祈祷師のいびつに曲がった太鼓と杖は 大昔の祈祷師の大墜落を思い起こさせる確かな証なのです  

 

編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住

2007年2月15日

 

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