――― NBSAネットニュース 2007年6月号 ――――

ネパールの視覚障害者を支える会(NBSA)の会員 支援者の皆様

ネパールは本格的な雨季に入ったにも関らず いまだに慢性的な停電と水不足が続いています  冒頭からいきなりハードな話題で始まり恐縮ですが ネパールは今 2006年4月の民主化闘争で 国民は一体何を勝ち取ったのか と疑問視したくなるような状況に置かれています  観光客がカトマンドゥに到着して まず驚くのは ガソリンスタンド前にできた長だの列  これは毎日わずかなガソリンの配給を待つ人々です  以前は南ネパール タライの人々のゼネストで道路が封鎖されていたのですが 今度はインドの石油会社がガソリン代の未払いを理由に 石油の輸出をブロック  粉ミルクの会社もこれに習ったため 市場から商品が瞬く間に消えました  ちょっと見たところネパールがより一層貧しくなったようですが 一部の都市では生産も所得も上がっているそうです  それらの富はいったいどこに流れて行くのでしょうか

さらにネパール 特にカトマンドゥ市民にとり大ショックだったのは 市内の水不足を解消する いちるの望み メランチ川プロジェクトが6月末に停止することです  最大の出資者であるADBアジア開発銀行が 期日までにこのプロジェクトが終わらねば 完全に手を引く決断を下しました  このプロジェクトは 市民に毎日17000万リットルの水を供給することを目指して99年に着工し 延長を重ねてきました  首相およびネパールマオイスト党の党首が 個別にADBにプロジェクトの延期と支援をおろさないよう嘆願しましたが ドナー側のADBは無能な政府に見切りをつけた模様  このような事態に陥った責任はいったい誰がとるのでしょうか  援助されることに慣れきった政府 しかし援助なしでは食っていけない貧困を極めている大多数の国民  真の援助とはよりよい統治を包括したものではないかと思います  途上国に住み援助の仕事をしている限り これは目をつぶっていられない問題と 静かに降る雨に打たれながら 初心にかえり考えてみました

またカトマンドゥや地方の都市では諸政党 組合 様々な民族のコミュニティーが最低隔週1回はゼネスト=バンダ を行っています  誰もが何かを主張しなければ人権が守られないとでも感じているかのようです  船頭多くして船山に上る 11月を予定している選挙は果たして実行されるか いまだに疑問視されています
6月のネットニュース なんだかジメジメした話から始ってしまいましたが 皆様も季節変わり目 ご注意ください

 活動報告
1 ボランティア ミーティングをNBSA事務所で開催 6月3日 参加者約20名

ネパール国営ラジオに勤務するかたわら NBSAで朗読ボランティアを続けるビシャールさんが  ボランティア同士が親睦を深める場所を提供してください と自発的に申し出ました  朗読 点字 ガイドボランティアが積極的に参加 楽しい1日でした  

2 メイクアップ 講習会 生活自立訓練会の一環 2007年6月5日 参加者15名
NBSAの生活自立訓練の一環  女子は調理や洗濯などに長けているので これまで男子を中心に訓練会を行ってきましたが 女子も何か学びたいとの要望がありました  そこで女性ならではの身だしなみ メイクに挑戦しました  プロの美容師を呼んだ3時間の講習でしたが おしろいを塗るなど初めての人がほとんどだったので 1週間後におさらいをしました  美しい肌を保つには 夜どんなに疲れていても洗顔 朝は眠くても洗顔をすること 紫外線に注意することなど 基本的なことに加え チャーミングに見せるメイクの仕方も学んでもらいました  全員が大満足 口では言い表せないほどの喜びようで いわゆる黄色い声で キャーキャー騒ぎっぱなし  こんなステキなことをしてくれたのはNBSAが始めて と大変喜んでもらえました  最後に参加者全員に  ミルクローション サンブロック コンパクトパウダー 口紅などの 化粧品をプレゼントしました  予算の関係上 洗顔フォームとメイクアップ ベースをはずしたのが 多少心残りですが

3 舵取りが難しいカトマンドゥの親たち
4月から3度にわたり カトマンドゥ市在住の 視力障がい児童の親たちと 会合をもちましたが 意見の一致が見られず 地方の親の会を呼んで開催を予定している カトマンドゥミーティングが遅れそうです  NBSAは広範囲にわたる情報や問題の共有化を目指していたのですが カトマンドゥの父母の要求は奨学金などの経済的バックアップ等が目的  地方の素朴な親たちとの差異をまざまざと見せ付けられました  また 当世の風潮でしょうか カトマンドゥ市の親たちは団結は必要だが 狭い盆地の中でも カトマンドゥはパタンやバクタプルとは一線を画する運動が必要と主張し 今後の展開にかげりを見せました

4 カセットテープ ライブラリーのヒット作品  王宮内の暴露本
昨年4月 国王から政治的権力を奪還してから様々な王室関係の書物が出版されるようになりました  NBSAもベストセラーになった 王室内部の権力争いや醜聞を描いた書物を音声訳しましたが 爆発的人気で現在大勢の人が順番待ち  世界中どこでも淫らなスキャンダルはうけがよいようです

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ネパール関連ニュース  
ヒマラヤの氷河 50年で消失の危機国連温暖化会議  Record Chine 配信
6月4日 カトマンドゥで 地球温暖化に関する会議が開催された  国連環境計画 UNEPのアジア太平洋地域事務所 シュレンドラ シュレスタ所長は 温暖化が進めば50年後にはヒマラヤ山脈の氷河は消滅すると警告した  中国の国境に位置するヒマラヤ山脈では 過去30年間 10年ごとに気温が0.15度から0.6度上昇している  年70mの速度で後退を続ける チョモランマ南方のイムジャ氷河をはじめとして 多くの氷河が後退を続けているという  
氷河の融解により 山脈の氷河湖が増水 洪水を引き起こすなど多大な被害が出ている  また氷河が消失すれば その影響は現地にとどまらず ヒマラヤ山脈を水源とする9つの大河 その流域の13億の人間に多大な影響が出るという

ネパール君主制廃止に道 6月15日配信 産経新聞 ネパールの暫定会議は6月13日フランス通信(AFP)によると ネパールの暫定議会は13日 議会の3分の2以上の賛成で君主制を廃止することを可能にする暫定憲法改正案を採択した  ネパールでは 11月に君主制の是非を問う制憲議会選挙が予定されているが 現在の暫定議会に参加する旧反政府武装勢力 ネパール共産党毛沢東主義派の強い要請で 選挙を待たずに君主制を廃止できる道が開かれた  国王が選挙の実施を妨害した場合 君主制の廃止を提案できるという



カトマンドゥ盆地3都物語 第2回目 パタン編
13〜18世紀まで続いたマッラ王朝の歴史の中で 最も華麗で荘厳な雰囲気を残す町パタンは またの名をラリトプル=美の都とも呼ばれる  また 木工 石工 金銀細工などの職人の町としても有名である  この町の歴史は古く 299年にベーラ デバ王によって築かれたとされている  また 仏教を保護したインドのマウリヤ朝のアショカ王がこの地を訪ね 町の周囲に残る4本のストゥーパ 仏塔を建てたとも伝えられる  パタンの人口の8割がネワール族で 仏教徒は全体の3分の2に達する  中でもサキャ姓を名乗るネワールは 代々仏像や仏具の製造や販売を生業とする者が多く 自らを古代の釈迦族の末裔であると信じている  彼らは シャカがなまってサキャになったので 自らをネパール唯一の正統派仏教徒であると主張する  
パタンの見所はマッラ朝歴代のパタン王が住んでいた旧王宮近辺で いくつもの古式豊かなヒンドゥー寺院が立ち並ぶ  王宮をほんの少し離れ 細い路地などに入ると仏教寺院や仏像が見られ その数はパタン市内だけでも2千はあると言われている  しかしながら多くの寺院の建築様式は 仏教とヒンドゥー教が共存している場合が多く 我々がイメージするようなお寺とはほど遠い  その中でも異色を放っているのが ヒラニヤ バルナ マハビハラ 俗にゴールデン テンプルと呼ばれる仏教僧院で その名の通り金色に輝いている  他に有名な寺院をふたつ紹介する  ひとつはマチェンドラナート 雨乞いの神を祭った寺院で豊穣をもたらす神が祭られているが 仏教徒とヒンドゥー教徒が共に崇めている  もうひとつの寺院はマハブッダである  旧王宮から徒歩で10分 やや奥まった場所にある インドのシカラ様式の寺院で 壁全面が仏像レリーフのテラコッタ板で覆われている   

カトマンドゥからパタンへのアクセスは至って簡単  5Kmしか離れていないのでタクシーが便利  カトマンドゥを流れるバクマティ川を渡るとすぐパタン市に入る パタンの旧王宮広場に到着すると 有名な寺院などはすべて徒歩で回れる

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ネパールの民話 18 キジとキツネ
むかし キツネはキジにとても親切だったので 2匹は親友になりました  キツネとキジの間に秘密はなく 喜びも悲しみも共にしました  ある日 キジが数個の卵を生みました  そこでキツネはキジに卵を食べてもよいか と聞きました  
「卵はひとつしかないのよ」
とキジはうそをつき 卵が孵るまで隠しておきました  

しかし キツネはひよこを見て 自分が欺かれたことがわかりました  そして そろそろキジを食べる時期がきたと思いました  キツネはキジにどこで朝ご飯を食べるのか と尋ねました  
「山の上でね」
とキジは言いました  そこでキツネは山に登ってキジを待っていましたが キジは山ではなく下の小川へ行きました  

ある日 キジは「今日は小川へ行ってみようと思うの」とキツネに言いました  そこで キツネは小川へ行ってキジを待ち伏せしましたが キジは午後の間中ずっと山の上にいました  しばらくして キツネはキジのうそに気づきました キジが山の上に行く と言ったらキツネは小川に下りました  そこにはキジが川床でひよこたちに餌をやっている姿がありました  

ひよこは逃げましたが キツネは親のキジを捕らえました  キジはキツネを長い間だましていたので 罰だと思い死ぬ覚悟を決めました  最後にキジはキツネにこう言いました 
「しばらく私の体を砂に埋めて 背中に竹の串を数本刺してください」
キツネはキジのことば通りに キジを砂で覆い 数本の細かい竹を背中に突き刺しました  キジは死にかけていましたが いきなり飛び立ちキツネに砂で目潰しを食らわせ 鼻や口に竹串をかませ 飛び去って行ったとさ  

編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住
2007年6月21日

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