――― NBSAネットニュース 2007年11月号 ――――

ネパールの視覚障害者を支える会(NBSA)の会員 支援者の皆様

謹賀新年 ネパール暦1128年 不況の最中 今年も楽しく祝いました  あれ 4月にも新年おめでとうではなかったかしら と思われるでしょう  そうです ネパールの公式の暦では4月中旬が新年です  ちなみに公式な暦はヴィクララム暦と呼ばれ ネパールの近世史でゴルカ王朝が天下をとったときに採用されました  なぜか新しい暦のほうが古く 今年は2064年にあたります  天下を取られたほうはマッラ王朝  こちらの暦では今年1128年 これがネパールで昔から使われていたオリジナルな暦  両方あるとめんどうなので 一般的にネパール暦はすたれていますが 唯一マッラ王朝を築いたネワール族は毎年盛大に新年を祝っています 

今月号では ネワールの新年と同時期に祝う 光の祭り ティハールをご紹介しましょう これは毎年占星術で日程が決まる5日間に及ぶお祭り  もとはインドから来たものだがあまり宗教臭くなく庶民がみんなで楽しめるもの  この祭りの最大の目的は 女神ラクシュミを家に迎え 富と繁栄を祈ること  朝はマリーゴールドを様々な場所に飾り 家の前に黄色い土で足跡や様々な色の粉でマンダラを描き 女神が家に入りやすいよう目印を作る 夜は灯明や豆電気をありとあらゆる場所に灯し 大音響で流行歌を流す  厄介なのはやたらと爆竹を鳴らすので 犬や猫が怖がって吠えまくること  また富の女神を祭る日なので この日はトランプ博打などもOKです  これで光の祭りが終わりとスムーズに行かないのがネパール式  ラクシュミを迎える前と後日にも 様々な儀式が展開されるのです  

ではその光の祭り ティハールの日程ですが 今年は11月7日から始まりました  初日は神のメッセンジャーであるカラスを祭る日 カラスが来やすい場所に餌をまきます  ところがカラスは賢いので警戒し 私は餌を食べているのを1度も見たことがありません   2日目は天国の番人である犬を祭り マリーゴールドの花輪を首にかけてあげます 犬はとても迷惑そうな顔をしているのですが  3日目は女神の象徴である牝牛にご馳走を食べさせ 赤い粉を顔中にふりかけて花輪を首からぶら下げます これも何だか気の毒ですね  4日目は本格的な光の祭り  そして朝から大騒音地獄  この日はデアシと呼ばれる芸人やセミプロ 果ては子どもまでが各家庭を巡り  軒下で歌やダンスを披露して お金を集めてもよい日  早い話が流しです  恒例ですがキャンパスの盲学生や 歌に自信のあるカトマンドゥの視覚障がい者がグループを組んで 各家庭を訪問し もらった祝儀を盲人団体の青年部の活動費に当てています  今年はNBSAのボランティア数名がサポーターとして大活躍  有名人や政治家の家をターゲットに訪問し なかなかの収益をあげたようで・u桙キ  しかしデウバ元首相宅の訪問では 3000円しかもらえず これでは花代にもならんわいと 芸人たちは苦笑いしたそうな  
 
さて再び光の祭り 5日目は最終日 この日もまた面白いことをします  普段は女性を軽視する傾向のあるヒンドゥー教徒が この日は姉から幸運と守護を授かります  姉は宗教的意味のある色とりどりの粉 ティカを弟や目下の男子の額に塗ります  これは姉が弟を死の王ヤマから 日本だと閻魔大王の手から救い出す という心がなごむ話しに由来しています  女性の守護力を男にあげることを意味しているそうで このティカを受けた弟は姉に 金銭やサリーの布などをプレゼントしなければなりません  女性の就労がままならぬネパールでは こうした臨時収入は女性にとって大歓迎です  何はともあれ みんながわいわいガヤガヤやって楽しむのがティハール  昔の日本の村祭りのようなものだったことでしょうが それすら覚えている人も最近の日本では少なくなっているのではないでしょうか

NBSA事務所はカラスと犬の日を除く 3日間お休みました

ルンビニへの旅  二十軒 起夫 奈良県在住 
今年9月に お釈迦様の生まれた土地であるルンビニを初めて訪れた  カトマンドゥから30分 小型プロペラ機でバイワラへ飛び さらに 並木の中を牛の群れがゆったりと歩いているタライ平原の道を走り ルンビニにようやく到着した  猛暑の中 日射病状態であったが 夜 樹に群生するホタルのイルミネーションで息を吹き返すことができた  翌朝見事に修復されたマヤ デヴィ寺院や その周りの石造遺跡 アショカ大王の石柱 沙羅双樹の大木などを巡り 2500年前 この地にお釈迦様が生まれたのだという感慨にしばしふけっていた  世界各地の仏教寺院が立ち並ぶこの一帯は 1978年に日本を代表する建築家の丹下健三氏により計画された  そして 国連やNGOによって聖地公園化され 今も整備中である  日本では考えられない広大なスケールと 悠久の時間を味わいながら はるばる日本から来てよかったと思う一時であった  
いま 奈良では興福寺で国宝八部衆全像が特別公開中である  天平時代を代表する阿修羅像や迦楼羅像 ビシュヌ神など八部衆像1300年以上前にはるばるインドから伝わってきた神々である  先日 奈良でこれらの群像に接したとき あらためてルンビニと奈良の繋がりを強く感じた  また いつの日にか仏教の起源を訪ねていきたいと思う  

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ネパール関連ニュース 
ガソリン不足につぐショックなプロパンガス不足
ガソリン不足はすでに10ヶ月目に突入したが ティハール祭を前に 今度はプロパガスの値上げが発表された  ネパールには都市ガスがない  値段が高騰しても大変なガス不足に陥っている  これも輸入国インドへの未払いが原因  

帰省ラッシュで事故多発 悪いのはだれ?アンケート調査結果
今年もダサイン ティハールとネパールでは諸民族の大移動が展開されたが その度に人身事故が多発  その原因の多くは長距離バスの超定員オーバーによるもの  では事故の原因を作っているのは誰か  ネパールの某テレビ局でアンケートをとった  原因1 警察? 2乗客? 3ドライバー? 日本だとまず警察の管理責任を問われるところだが  
ネパールTVのアンケート結果は 1ドライバー 2乗客 3警察になっていた  ドライバーは小遣いを稼ぎたいし バックに企業の権力が控えている  乗客もかなり無責任でゴリ押しをする  そして残念なことにネパールでは国権を行使する機関の強制力が極めて弱く しかもすぐに金で買収されるという弱点がある 

日露戦争以来 正露丸 100年ぶり自衛隊装備品に  
日露戦争時に日本軍が製造し 陸海軍の装備品だった胃腸薬正露丸が  今年100年ぶりに自衛隊の装備品に復活した  大幸薬品のセイロガン糖衣Aが防衛省の装備品として採用されたもので 今年3月のネパール派遣の際に自衛隊員に配給されたという 

教師殺害など教育現場の攻撃急増 国連報告 11月10日産経新聞  
国連教育科学文化機関ユネスコは9日までに 学生や教師 教育施設への攻撃が過去3年間で急増していると強い憂慮を示す報告書を公表した  教師が生徒の目前で殺害されるといった 子供たちの心に深い傷を残す残虐な事例も発生しているという  政府と反政府ゲリラ組織による内戦が続いたネパールでは2002年から06年にかけて 700人以上の教師と1700人以上の学生が逮捕 もしくは拷問を受けた  国連は2015年までに 世界のすべての子供たちが初等教育の全課程を修了できるようにするとの目標をかかげているが 紛争多発地域に住む7700万人の子供の4割が学校に行けない状態だという  



ネパール 時の動き
楽しい秋祭りの最中 大型ゼネストはなかったが地方ではマオイストと村人が衝突する事件が数件あった  最悪だったのは マオイストによるバラ郡のジャーナリスト BKシャハの誘拐殺害事件で 暫定立法府の特別議会が終わるまで 政府とマオイストがこの事実を隠していたことだ  マオイストの党首は遺憾の意を表したが ジャーナリスト団体が祭りまじかに全国的な集会を開いた  

民衆不在 とんちんかんなネパールの政局 
共和制と完全比例代表制を巡って 各政党内部でも意思統一が続いていたが 11月になりマオイスト党は強く主張していた共和制を棚上げにし 選挙では連邦制に的を絞ることを宣言した  そして統一共産党 UMLと足並みを揃え 政権議会初日に連邦共和制を認可するという方針に転換した  マオイスト党はどちらかの要求のうち ひとつでも取り上げられれば譲歩する と発表し 選挙で有利な方を優先したようだ  決着がつかない場合国連UNMINに決めてもらおう と言う話しも出たがさすがにこれは蹴られた  党利党略を優先しすぎ仲間割れをしている間に となりの大国や国王が動き出すのではないか といまいち心配だ

ネパールの民話 23 ララ湖の誕生
ネパール西北ムグ郡の美しい湖ララは むかしただの谷にしかすぎませんでした  今日はこのララ湖ができたお話をしましょう  
ある日ひとりの隠者がこの谷に来て 村の女に食べるものを請いました  なんとこの愚かな女は 隠者に食べ物の代わりに一握りの灰をあげました  隠者はもと来た道を戻りましたが 施しをしてくれた親切な人たちに早く山に登るよう言いました  そして隠者も山に登り 自分の手のひらの灰を吹き飛ばし そして持っていたタンブラーを壊しました  すると タンブラーの水は勢いよく坂を流れていきました  水は谷の村を飲み込み 大きな湖になるほど果てしなく流れました  

水はさらに溢れかえり 出口を求めて東のムグーの貴重な岩塩を水に流すか 南のアッチャムの水田に洪水を起こさんばかりの勢いの達しました  湖の東に住むこの隠者は いま一体何が起こっているかをやっと気付きました  そして もし水がこのまま東に流れていけば 自分の大切なものを失いかねないと思いました  そこで隠者は 丘を蹴り上げ アッチャムに向けて水路を作り 水を南に導きました  こんな経緯で 美しいララ湖が誕生したのです  
ララ国立公園について  面積 106平方キロ  場所 ララ国立公園は カトマンズから西へ371キロの距離にあり カルナリ県のムグ郡とジュムラ郡にまたがっている公園です  ここにはネパールで一番大きな湖であるララ湖 面積10.8平方キロ  標高 2990メートル があります  ネパールの国立公園の中では一番小さい公園です  
特徴 この公園は標高1800メートルから4048メートルの範囲にあります  主として針葉樹林で覆われており 特にララ湖の周囲は青松 ビャクシン ヒマラヤトウヒ 樫 ヒマラヤ糸杉等の林があります  標高が3350メートル以上になると モミ 樺などの林が見られます  また マロニエやクルミノキ ヒマラヤポプラなどの落葉樹の林も存在しています  公園の一角には ジャコウジカの集団の生息が確認されています  それ以外には ヒマラヤ黒クマ ヒョウ ゴーラル 野生のヤギ イノシシなどが棲んでいます  ララ湖では雪マスしか確認されていません  鳥類では 渡りの水鳥 キジ類などが訪れた人の目を楽しませることでしょう  冬には カイツブリの仲間 ホシハジロの類を見ることができます  それ以外の良く見かけられる鳥には 雪鶏セッケイ ニジキジ カリジと呼ばれるキジなどのキジ類があります  

編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住
2007年11月15日

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