――― NBSAネットニュース2008年12月号 ――――

ネパールの視覚障害者を支える会(NBSA)の会員 支援者の皆様

 

2008年5月 ネパール国民は王政を廃止し 連邦共和制の道を歩みはじめました  いま 新生ネパールでは 国民としての権利を求める様々な民族の勢力が 怒涛の勢いで台頭し 新たに 国民もしくは国家とは何かという問題を突きつけました  大国インドと中国にはさまれた小国 そして多民族国家ネパールには重過ぎる荷です  しかしながら朝には日が昇り 女が水を汲みの瓶を持って水場に行き 日暮れには夕餉の煙が昇り 家族全員がかまどの側に集まって暖をとる人々の暮らしぶりは 年が明けても何も変わりません  変わりつつあるネパールで 変わらないのは生きることに忠実で まじめな人々の姿  ネパールは途上国でも最も貧しい国ですが 世界的恐慌の余波がじわじわと押し寄せてきました  もとより失うものがない人々の生活ですが 困窮を極めるのは時間の問題のようです  皆様方にとっても厳しい年の暮れになったことと存じますが 来年もなにとぞご援助賜りますようお願い申し上げます    

ネパールの視覚障害者を支える会 

Nepal Blind Support Association NBSA

会長 渥美 資子

 

●現地活動報告 

定例事業のカセットテープ ライブラリーと点字隔月紙 タッチ13号の発送のほか 次の三つの事業を行いました 

11月24日 視力に障がいのある児童の親の会 カトマンドゥ ミーティング開催

カトマンドゥの親の会代表5人 NBSA役員4名、スタッフ1名が参加  今後の活動と 会の規約について検討を始めた  次の会合は12月下旬予定  

この会は カトマンドゥ在住の親を中心に 都市から地方へのサポートを目指すものだが みな団体などの結成をしたことがなく 今後もNBSAが中心になって盛り立てていくほかなさそうです  

 

12月3日 国際障がい者デー 記念ラリーに参加

主催 全国障がい者連盟  後援 ネパール駐在国連 北欧の障がい者支援団体など  また プラチャンダこと国家首相のプスパカマル ダハールは会場に祝辞を送った  NBSAは昨年同様 街頭でビラ2千枚を配り 視覚障がい者を配慮した交通マナーなどを市民に訴えた  式典は昨年よりずっと立派だったが 参加者は推定4千5百人と5百人ほど減った  社会的弱者と呼ばれている人々のなかで 障がい者だけが特別視されるのは何だかいやだなぁ と考える人も出てきたようです  

 

 

12月6日 国際ボランティアデー NBSA感謝祭 

本来は12月5日金曜日ですが ネパールでは土曜が休日なので 誰もが参加しやすいように一日ずらしました  

こちらも日本では知られていない行事ですが NBSAカトマンドゥでは 毎年熱心にサポートしてくれたボランティアさんの労をねぎらい お食事会などを開催しています  昨年は カカニの1泊旅行を行いましたが 今年は経費を節約しカトマンドゥ市内の安い食堂でお食事会をしました  

NBSAのボランティアには各自の特技を生かして 様々な分野でボランティアをしていただいています  一番大変なのは カセットテープ ライブラリーの朗読ボランティアです  その中にも小説 詩 などを朗読する人は かなりのスキルが必要で 熟練者にお願いしています  また 学校の教材や情報関係雑誌などを朗読するボランティアさんは どちらかというと素人レベルの人にもお願いしています  また コンピューターに録音したものを CDに移し 今度はカセットテープの編集を行います  ネパールではパソコンを持っている人が少ないので カセットテープの利用者の方が断然多いのです  また CDで聞きたい人には オリジナルをコピーしディスクを15ルピー 約25円で購入してもらっています  これらの作業を行う専門のボランティアもいます  また 点字雑誌に関わるボランティアもいます  まず記事の編集ですが 一般的な新聞と雑誌から障がい者に関連する記事を収集します  その編集が第一段階  次に点字タイプと校正と3段階に分かれていますが それぞれかなり専門的な技術を要します   最後に忘れてはならないのが ガイドボランティアです  ちょっと地味な仕事のようですが NBSAの訪問者をバス停まで送ったり迎えたり イベントの際には会場係りとして働いていただいています  ネパールでは主婦のボランティアが非常に少ないのですが この分野では主婦が活躍し やさしいおばさんとしてユーザーにとても人気があります  

 

     日本でのイベントのお知らせ

ネパールの視覚障がい者と共に生きると題した 講話サロンを開きます

日時 12月23日 休日 14時から16時

会場 ギャラリー&花野井坂 千葉県松戸市 

申し込みと詳細は 添付をご覧ください

 

     ネパールの民話 全24話がネパール全土の盲学校に配布されます

昨年の12月号でご紹介した 神戸のシルバーカレッジの英語点字グループがネパールの民話 全24話を30冊NBSAのカトマンドゥに送ってくれました  初版をいただいたときに ネパールの文学を点字で紹介したのはこれが始めて 本当にうれしいことだ 全国の盲学校に配布したい と希望を述べたところ カレッジの皆さんがそれに応えてくれました  点字紙などもすべてカンパで作成してくださいました  心より御礼申し上げます  ありがとうございました  できるだけNBSAカトマンドゥから地方の学校へ手渡ししたいと思っています 

 

     忘れじの人々 ネパール人の明るさと インテリの悲しさを背負ったA先生

ネットニュース9月号で 私のネパールでの学生時代の思い出を書いたら  バカバカしいけどおかしかった と評判をとったので すっかり天狗になってしまいもう一発 思い出話を書かせていただきます  

 

ネパール語の教授がへたっぴだったM先生に続き 今度はA先生がネパール語学科 2年生の担任になった  この先生の 外国人のための母国語教授法は実に見事で 自作の教科書を元に毎日ビシビシしごかれた  あまりに宿題が多く 憎らしかったがそれだけ授業に熱心なので 誰からも尊敬されていた  なぜこんな優秀な教師が 滞在許可を取るだけに入学した ヒッピー学生相手にネパール語を教えているのか? 実は先生には暗い過去があった  A先生は旧ソ連の留学生で博士号を取得した人だが 祖国ネパールに戻ってみると 母校の国立トリブバン大学の教授らは 彼を叱咤し もう一度一介の学生になって勉強しなおせと言われたそうな  A先生は 出身も学歴もピカいちだったらしいがあっさり切られたのだ  ネパールではよくある風潮で たとえ国のためになるような人材でも 自分の地位を脅かしそうな学者は 平気で抹消してしまう  その後 A先生は大学から冷遇され続け 最後に外国人のためのネパール語教師に納まったのだ  これがネパール式さ 嘆いたところで何になる と明るく笑い飛ばすまでに至った先生の過去には  壮絶な戦いと葛藤が渦巻いていたのだ  生涯何度出会えるかわからない素晴らしい先生に私はネパール語を習った と感慨にふけるばかりだが 私自身の評判はすこぶる悪かった  当時の私は カトマンドゥ郊外の点字図書館に毎日通っていて 必要最小限の日数しか大学に出頭せず 授業が終わると風のごとく去りぬ と異名を付けられたほどの劣等生であった  渥美 よりこ

 

     ネパールの12月の国民の祝日

12月3日 国際障がい者の日 障がいをもつ公務員のみ休日 新規

12月9日 イド犠牲祭 イスラム教祭日 新規

12月12日 ヨモリプルニマ カトマンドゥのネワール民族が中心の寒の入り 新規

12月25日 クリスマス キリスト生誕際 キリスト教の祭日 新規

12月30日 ロサール シェルパなどモンゴル系の新年

2009年1月1日 西暦新年 新規

 

うーん 国王を政権の座からおろし ネパールは世俗国家になったと思っていたのですが 様々な民族の宗教的行事がそのまま 国民の祝日になってしまいました  それに新大統領が宗派無差別によく顔をだす  それも公費を使って  加えて合間にゼネストもちょくちょくあるし ネパール国民いったいいつ働くのだろうか?

 

●ネパール関連ニュース    

11月17日  ブッダの化身またしても行方不明

多くの人がブッダの化身と信じるネパールのラム バハドゥール バンジャン17歳が 数千人の信者らの前に姿を現した後 再び行方が分からなくなった  警察当局が22日明らかにした  それによると バンジャンさんはカトマンズの南東約150キロのラタンプリで約10日間にわたって信者らに説法などをしていたが 再び姿を消したという  
バンジャンさんは2005年 密林の木陰で約10カ月にわたって瞑想するのを多くの人が見に訪れるようになり 一躍有名となっていた  10日前には約1年ぶりに姿を見せたが行方が分からなくなるのは過去3年間で3回目となる  警察によると バンジャンさんは22日 5千人以上を相手に25分の説法を行った後 瞑想のため地下施設に入って行ったという  

 

11月17日 国民的キャラクター ガチャピンが17日 世界の屋根 といわれるヒマラヤ山脈の5520メートルの山 ヤラピーク の登頂に見事成功した  ガチャピン一行は 自然保護の大切さを訴えるため 頂上でLOVE NATURE のメッセージを送った

 

11月26日から12月3日 タイの国際空港の閉鎖でネパールでも観光客が大迷惑

日本からネパールに渡航するとき 乗り継ぎなど非常に便利なのがタイ航空便  ヒマラヤが最もきれいに見える季節で このときも大勢の日本人観光客がカトマンドゥに滞在していた  タイ航空の到着を待つ人のみならず 連日のようにタイの国際空港封鎖期間が延長され 岐路をインドや中国経由などに変更を試みた人々が 連日旅行代理店に詰めかけた  1週間以上も無益に滞在を迫られた観光客の滞在費もバカにならない  この不況の中 タメル地区の数件のホテルは 宿泊費を1泊只にしたりディスカウントしたりして 困っている旅行者を少しでも助けようと努力したそうだ  偉い そしてやさしい

 

11月27日 ネパール人も動揺した ムンバイ同時テロ  

世界中を震撼させた無差別テロ事件  ネパール人2名も巻き込まれ 当地でも連日のように現場写真が放映された  ネパール南西部にはイスラム系住民が多いが 集団リンチ事件など起こる可能性もあるだろう  インド人でネパール語を解す人が少ないが ネパール人の多くはインドの様々な言語がわかる  一般的なネパール人がテロップなしでこのニュースを見ていたのには 改めて驚かされた  

 

10月初旬からネパール観光客が増大した  政治的安定性が見え出したおかげ  カトマンドゥに乗り入れている空港会社も連日100%に近い搭乗率であった  だがしかし11月下旬から上記のような近隣諸国のテロなどのせいで ネパールの観光産業も陰りをみえること必至  ネパール多難続きのようです  がんばれネパール

 

12月から計画停電が 46時間に延長

毎日 朝昼晩と 曜日を変えて計画的に停電がなされます  ネパールは降雨量が多いし ヒマラヤの解けた水も利用できるのになぜ停電 と思われる方が多いと思います  NBSAホームページ http://NBSA.sakura.ne.jp/ 活動報告の欄 会報22号でその訳が解説されています  こちらも合わせてご覧ください  

 

     グルカ兵の物語  最終回

1年間にわたってグルカ兵の歴史を 様々なエピソードを交えてご紹介してきました  今回は我らの時代にぐんと近づき 第2次世界大戦終結後が舞台になります  来春からは再びネパールの民話が登場します  1年間ネパールのグルカ兵を可愛がってくださり ありがとうございました  

 

11 平和維持軍

第2次世界大戦の余波を受け 世界の様々な地域で政変が起こった  その最中 グルカ兵たちは自らが新しい役割を果たしていることに気がついた  

 

グルカ兵は 様々な民族間の治安維持を依頼された  インド分割後の残酷を極めた民衆による暴動の鎮圧にも グルカ兵が登用されている  時を同じくし インドの軍隊でも 海軍内部で激しい反乱が起こり さらにインド空軍とインド軍との間で熾烈な戦いが展開された  また 警察の間においても暴動が起こった  イスラム系の警官は イスラム教徒を逮捕するのを拒み ヒンドゥー教徒警官は 同派のインド人の逮捕を拒否した  しかし グルカ兵だけは憎悪や恐怖 疑惑をもたれながらも 公平に そして慈愛をもってみずからの任務を果たした  

 

「残念なことにインドには 難民のすべてを護衛し かつ暴動をすべて鎮圧するのに十分なグルカ兵がいなかった」と英国の役人は書き残している  

 

1982年 イスラエルの装甲部隊がレバノンに侵攻した時 国連事務総長ザビエル ペレスは 国連軍はイスラエル軍を制圧できなかったと嘆いたが P.L.O.の代表は「11カ国 6千人から成る平和維持軍の中で イスラエル軍の攻撃に耐えたのはネパールのグルカ兵だけだった」とグルカ兵の果敢な戦闘を賞賛した  

 

終わりに:かくしてグルカ兵は 今日に至るまで 英国軍の指揮下にありながらも 地球上の紛争地帯の安全を守るために活躍している  また ネパール国内においては グルカ兵の退役軍人らを中心に 村落開発 教育支援などの分野で祖国の発展に寄与している  

 

●2009年1月号 休刊のお知らせ

まことに勝手ながら 12月15日より4週間一時帰国します  年末 年始を日本で迎えるのは久しぶり  申し訳ありませんが 2009年初のネットニュースは2月上旬に配信させていただきます  編集担当 渥美よりこ

 

●事務局便り 

NBSA入会をご希望される方は 事務局にご連絡いただければ 振込口座取扱票をお送りいたします 

事務局 〒2840005 

千葉県四街道市四街道1−9−3

視覚障害者総合支援センターちば内 NBSA

事務局担当者  高橋 恵子  電話:043−424−2501

 

またはE−メールで nbsa@mail.com.np  もしくは yorikonepal@hotmail.com直接ご連絡ください

 

NBSAネットニュース 編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住

2008年12月9日

 

NBSA: http://NBSA.sakura.ne.jp/ 

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