――――― NBSAネット・ニュース 2004年8月 ―――――

 

  ネパールの視覚障害者を支える会

Nepal Blind Support Association (NBSA)


会員 支援者の皆様 残暑お見舞い申し上げます
ネパールは今年例年より雨量が少なく 秋のお米の収穫が今から心配されています 
連日の猛暑にかかわらず NBSAのカトマンドゥ スタッフは連日手弁当で活動を続けています 本日はネパールのニュースをカットして 8月のイベントをご報告いたします

祝子供の日クイズ大会


国際障害者の日は何月何日ですか
12
3日です
きりりとしたアナウンサーの質問に おずおずと小さな声で答えるのはダラン出身のニマラ・タマンさん 15歳  
ティック 正解
やった 小さなため息が漏れる
ネパール国営テレビの録画風景である

8
20日は秋の訪れをつげるナーグパンチャミ 蛇の神様を祭った日と共に ネパールの子供の日  全国の学校が休日になりチャンネル数の少ないネパールでは 多くの子ども達が想像したこともなかった 目の不自由な学童のクイズコンテストに魅了させられたに違いない  7月下旬から綿密に準備がなされ ネパール各地 4箇所で行われた予選に勝ち抜いた児童6名が 16日にカトマンドゥに集合した それもはじめての飛行機の旅  都会の騒音に驚かされ 興奮が収まらずそのせいか初めはなか
なか打ち解け合えなかった出場者たちも 一夜明けると誰もがすっかりお友達  17日の朝は7時に朝食をすませ 軽くウォーミングアップ  徒歩で王宮通りやカトマンドゥの名所を回った それらからお茶とおやつを食べて いざネパール国営テレビへタクシーで向かう  主賓の女性児童社会福祉省の大臣も到着 さぁこれからクイズ番組の録画だ と思いしや あれあれ最有力優勝候補のカトマンドゥ代表がまだ着いていない  うーんさすがネパール 思いもかけぬ展開に一同慌てたが ただの遅刻であった  ともかく全国の精鋭をすぐる学童総勢8人がここに会した  平均年齢16歳  見た目は日本の学童よりずーと小さい 
録画準備が整いました スタジオにお入りください
と前述のきりりとしたアナウンサーが呼びに来た
クーラーをきかせたひんやりした室内 天井も高く 自分の吐く息さえ聞こえそうな静寂なスタジオに 誰もが身をすくめた  中でもダランの代表の緊張が激しく 後ろに回ってそっと肩を叩いてみても収まらない  いつも冷静 品行方正で名の知れたネパールの盲学校の最高学府ラボラトリースクール(カトマンドゥ盆地代表)の生徒2名も緊張している  南西部の華やかな国際都市ポカラの生徒も同様だ 豊かな太陽と水の恵みにはぐくまれて 陽気にのんきに学ぶポカラのアマルシンハ学校の生徒すら 今日はどうも元気ない  その点南部のブトワール出身の生徒は 年齢も体格もほかの地方の生徒より勝っているせいか 多少の落ち着きを見せていた
みんな どうしたの なんだか危ない こんな様子で声が出るの
ネパール盲人協会会長 日本から参列したNBSA代表 コーディネーターのプララダと渥美 そしてこれまでの予選を支えてきた ボランティアも不安になってきた
これはもう一種のお祭りですよー ここまでくればもう何でもよし 楽しければよし 観客も腹をくくった
何度か音合わせなどをさせられ やっとクイズが始まった

オーストラリアの首都はどこですか ダラン代表どうぞ
シドニー
違います 次カトマンドゥ
キャンベラ
ティック 正解 再びカトマンドゥでいきます 英国の通貨はなんですか
ドル
残念 次ポカラ
スターリング ポンド
ティック 正解 再びポカラにききます
ヨーロッパ共同体の通貨はなんですか
わかりません パス
ではブトワール
ユーロ

質問が立て続けに飛ぶ 冷や汗など流しているひまもない だがせっかくの晴れの場で緊張がほぐれないのはダランの生徒2名 彼らの体格も小柄 どうしてもプレッシャーを隠し切れない その点大柄の二人組みブトワール勢は強い! 実のところブトワールは予選で最悪の成績をマークした学校 ところが南国育ちでもとよりおおらかなせいか 本番には強く 最後には動ずることなし  
イヤー勉強不足がたたっちゃったよ と山をはずしたポカラの代表  
むむむー こんなはずではないのに となぜか実力を発揮できないのはカトマンドゥの代表2人  手に汗握る決勝戦 誰もが固唾を飲む中 我々に振り当てられた時間は飛ぶように過ぎ去った 
1
位 ブトワール 優勝
エエッと観客から声があがる
これが本番 競技の醍醐味 ゲームと同じで何が起こるか予測ができない
2
位 カトマンドゥ 準優勝
無念であったろうが これが現実

泣いても笑ってもすべてが収録され 作業は編集局に移行した
2
日あけて820日 ネパールの子供の日にNBSA視力障害児童のクイズ大会は ネパール全土で放送された  このような催しは ネパールの視力障害児童の間で始めてとのこと 視聴率などの統計がとれないネパールでは 知るすべがないが この番組はネパール全土の国民に 深い感動を与え 目の不自由な仲間には誇りと勇気を与えたことだろう
7
月下旬 準備委員会会議 各地方に通達
8
6日 ポカラの アマルシンハ スクールで 校内予選 
8
8日 ブトワールの スリ シャンティ ナムナ スクール 校内予選
8
13日 ダランの プルバアンチャール ギャンチェチュ スクール 校内予選
8
15日 カトマンドゥ盆地内地区予選 キルティプル ドゥリケル ラガンケル
8
16日 出場者全員がカトマンドゥに集合
8
17日 ネパール国営テレビ局のスタジオにて決勝戦
8
20日 子供の日を記念したNBSA視力障害児童のクイズ大全国放送

選出方法
1 地方の各学校から10人の参加者を選び 校内クイズ大会を開催し 上位二人を選出 参加記念表彰状と学校へ協力費を支給 代表2人分のカトマンドゥ行き航空運賃を手渡し 初めての飛行機 初めてのカトマンドゥ行きに代表は感無量
2 カトマンドゥ盆地予選 
会場 ラボラトリースクール
  カトマンドゥ市 キルティプル ラボラトリースクールから2名教師任意の選出
  パタン市 ナムナマチェンドラ スクールから2名教師任意の選出
  ドリケル市 サンジバニ スクールから2名教師任意の選出
  
クイズ大会の意義:
誰もが公平な教育を受けることができたら 障害があってもその学力は 一般のネパール国民となんら変わらず 教育を受ける権利をもっていることを 広くネパールの人々に訴えることを目的とした  昨年はカトマンドゥ盆地だけで同様な クイズ大会を行ったが 通常まったく注目を浴びない地方の学童にも 首都の学童と肩を並べ参加する機会を 持たせる事も目指した

クイズ大会裏話:
いやはや大変でした  ネパールは通信網が不完全すぎるのです 電話も地方では思うようにつながらず 無論ファックスはなし 誰かが口頭で情報を伝えてくれるのをじっと待っている こんな状況の中でのアレンジは 当初の計画が大幅に狂ってしまったことが多々ありました  子ども達は初めてのフライトで有頂天になっていたものの その期待を裏切るように不意に飛行機がキャンセルになったり 航空会社の都合で時間が変更になったりの連続  こちらは未成年を預る身 事故があったら親に会わせる顔がない 毎時間緊張が続き コーディネーターもボランティアも心身ともに疲労コンパイ  アテネ オリンピックに負けず劣らず ハラハラ ドキドキの連続 スリリングかつダイナミックな催しでそれなりに楽しかったですよ

大好評アナウンサー養成講座

8
2日から始まったアナウンサー養成講座 当初の10人をはるかに超え現在20名の受講者が熱心に学んでいます  これはNBSA2004年度の事業計画 カセットテープライブラリー事業の一環として 小説や雑誌を読んでくれる アナウンサーを養成する予定でした 現地のNGO団体の協力で思いのほか安価で 講座を開設もらい それでは多くの人々に参加してもらおう と企画したものです  普段人前でスピーチをする機会の少ない目の不自由な女性や 身体に障害を持つ人々が多く参加しています  
地方出身の視覚障害の女性は 地元に戻ったら地方のFMラジオ局で働きたい希望があるようです  ネパールの就職事情は最悪で 即座に職を得ることは難しいでしょうが 彼らの自活を望む気持ちを尊重したいと思い多数の人に参加してもらいました

職業訓練会援助

8
22日にネパール盲人協会の女子学生寮で ストローすだれ作りの講習会を開きます 日本から来ているNBSAの役員に ぜひ何か新しい手芸や工芸を教えてほしいという要請に応えたものです  プラスチックのストロー1本を10等分し つなぎ目に四角い紙を挟み 糸で繋げていく という簡単なものです  受講生のほとんどが地方出身者でこれまで一度も学校教育を受けた経験のない人もいて どのように指先を使うのか ふたを開けてみないとわかりませんが 頑張って作り上げてもらいたいものです
尚、受講生のみなさんには 地元に戻ったら天然の麦のストローですだれを作ってもらいます  さぞきれいでしょうね

(文責 カトマンドゥ駐在員 渥美よりこ)

NBSA
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