――― NBSAネットニュース 2011年11月号 ―――

ネパールの視覚障害者を支える会(NBSA)の会員 支援者の皆様  


光の祭ティハール

トルコの大地震 そしてタイの大洪水  世界がひっくりかえりそうな自然災害が起こっている最中 慢性的な貧困に苦しむネパールでは まことにのどかなお祭が続きました  

豊穣を祝うダサインに続き 10月後半は光の祭ティハール  多数の仲間たち ネパールの視覚障がい者が街角に そして政府高官の私邸等 高級住宅地を巡り 唄を披露してたくさんのおひねりを頂きました  それらの金子は個人の足代をのぞきすべてを盲学童と学生の育英資金にまわしたと後々聞きました  


いきなりしんみりした話ですが 一見楽しそうな祭りの最中にも置き去りにされている人々 そしてそれを少しでも助けようとする仲間たちがいたことをことを知り目頭が熱くなりました  

もうひとりもいなくなったと思いますが 昔日本にもいた視覚障がいの女性たちが 

三味線を弾き 唄を歌いながら各地を巡り活路をしのいでいたそうです  

ネパールの辻楽師はとても陽気で風情は異なりますが やっぱり大変だと思います  

ともあれ 苦あれば楽あり  私たちは微力ながらも前進し続けています  

来年はぜひティハールの祭に参加してください  きらびやかで楽しいですよ


現地活動報告  

9月下旬から約1ヶ月 長期の祝日が続きましたが 飛び石で数日間事務所を開けました  多数の利用者もスタッフも帰省し 全員がカトマンドゥに戻ってきたのは先週末  ボランティアスタッフは皆若いので 帰省して家族と何となくぼんやり過ごしていたのに飽き飽きした様子  1ヶ月近くパソコンに触れなかったので大張り切りで仕事に励んでいます  利用者も同様 新しい小説ありますか?と事務所に立ち寄ってきます  


定例活動

カセットテープライブラリ事業 トーキングブックの作成  

新作の音声化と共に これまでカセットテープに吹き込んでいた小説類をCDに移し替えをしています  他に大学レベルの教材の作成



点字情報誌タッチ

9月号でお知らせしましたが いまだにプリンタが不調で 新作タッチ27も同市内のネパール盲人協会に印刷をお願いし 発送することになりました  恐らく今後も印刷はネパール盲人協会に委託することになりそうです  

また タッチの内容も検討中で 新聞等に載った障がい者に関連する記事等を中心に編集してきましたが あまりにマンネリと非難の声も上がっています  今後十分に検討してタッチ28号を作成する予定です  


ネパール関連ニュース

ネパール 貧困撲滅を 市場で路上パフォーマンス

毎日新聞 10月17日配信

男たちが見つめる中 路上で椅子に座る少女は その口がテープで塞がれ両手は固く縛られている  よく見ると 少女はダイニングテーブルに向かい 卓上の皿に手を預けている  食べるという行為を阻まれているかのような光景だ  


ネパールの首都カトマンズの野菜市場  国連が定める「貧困撲滅のための国際デー」の17日 啓発のために実施された路上パフォーマンスだ  

世界銀行は 1日に1.25ドル未満で暮らす貧困人口を約12億人と見積もるが 最近の食料価格高騰でさらに増加も予想されるという  封じられた少女の口 「声なき声に耳を傾け 行動を」と呼びかけているようでもある  


インド北部で脳炎流行 子ども中心に430人以上が死亡  

CNN10月18日 

ニューデリーインドの保健当局者らによると 北部ウッタルプラデシュ州で脳炎が流行し 今年の死者は少なくとも435人に上っている  子どもが死者の大半を占めるという  ネパール国境に近い貧困地区、同州ゴラクプルを中心に感染が広がっている  現地の医師によると 死亡例は8〜9月に集中した  毎日約30〜35人が新たに脳炎の診断を受けているという  
脳炎は飲食物や蚊を通して伝染し 幼い子どもや高齢者は重症になりやすいとされる  

同医師によると この地区では脳炎がよく流行し 昨年は500人が死亡した  インド政府の統計によると 2009年には同国全体で774人が脳炎で死亡  このうち556人が同州の住民だった  


ネパール実習生 茨城のJAに派遣へ  震災で人手不足

毎日新聞10月18日 東京電力福島第1原発事故で多くの中国人実習生が帰国し 労働力不足に悩む茨城県鉾田市の JAかしまなだに ネパールから実習生が派遣される見通しになった  ネパール側には農業技術向上につながる との狙いがあるが 日本の外国人技能実習制度は実習生受け入れを「1農家2人で2年まで」と制限しており 三保谷二郎組合長は「特区」として制限を撤廃するよう国に求めていく考えだ  


18日 JAを訪問したガネッシュ ヨンザン タマン駐日ネパール大使は正式に「ぜひ実習生を送りたい」と申し入れ 両者は実習生派遣に向け準備を進めることで合意した  タマン大使は「農業をベースとした良い関係ができれば」とも述べ 三保谷組合長を来月ネパールに招待する計画も明らかにした   


JAによると 鉾田市が震災前に受け入れていた中国人実習生は337人  原発事故後 放射性物質の影響を危惧した197人が一時帰国した   同市ではメロン トマト ホウレンソウなど人
手がかかる農産物を大規模に栽培する農家が多く 事故の影響による実習生の帰国者は県内のJAで最多となった  

 4月以降 報道などで実情を知った外国人材送り出し機関からJAへの問い合わせが相次ぎ 6月中旬 鉾田市でネパールを含む6カ国の送り出し機関が農家の代表役員らにプレゼンテーション  この結果 ネパールが最有力となった   


ネパールの実習生を送り出す愛知県の労働者派遣会社「エベレスト」社長のラマ ネマさんは「ネパールでは約7割が農業に従事しているが 技術が遅れている  鉾田市は全国でも有数の農業地帯   優れた技術を母国に
持ち帰って伝えてほしい」と期待をこめる   一方 受け入れ側の三保谷組合長は「大規模になるほど人手が必要だが 現行制度では受け入れ人数が限られている」と話し より多くの研修生を受け入れられるよう 国に働きかけていくという  


 登山家の朴英碩さん ヒマラヤで消息絶つ

綜合ニュース 10月20日

ヒマラヤの8000メートル峰アンナプルナを登山中 18日に消息を絶った韓国を代表する登山家 パク ヨンソクさんの捜索が始まったが まだ行方を確認できていない  ネパールで捜索に携わるシェルパは20日 聯合ニュースの電話取材に対し 「ヘリコプターでの1回目の捜索では遠征隊の痕跡は見つけられなかった」と伝えた   ヘリコプターによる2回目の捜索
ではシェルパ4人を5200メートル付近に投入し捜索を続けている  


朴さんはアンナプルナ南壁を登山中の18日午後4時(日本時間午後7時)に衛星電話で「雪とガスを伴う落石で登山を中断した  前進キャンプに引き返す予定」とキャンプに伝えた   その後 連絡が完全に途絶
えた   
朴さんは隊長としてカン ギソク シン ドンミン隊員とともに遠征隊を組み 難所とされるアンナプルナ南壁の新ルート開拓を目指して登山中だった   アンナプルナは海抜8091メートルで世
界の8000メートル峰14座のうちの1つ  南壁の高さは3500メートルで海抜5000メートル ベースキャンプから頂上まで切り立った岩壁が2000メートル続く

朴さんは2005年に世界初の山岳グランドスラム(8000メートル峰14座 7大陸最高峰登頂 南北両極点踏破)を達成している  


東電OL殺害事件 弁護団 第三者のDNA検出鑑定書を提出

産経新聞11月2日

東京電力の女性社員殺害事件で 強盗殺人罪に問われ 無期懲役が確定したネパール国籍のゴビンダ プラサド マイナリ受刑者(45)の再審請求審で 弁護団は遺体の胸や下腹部周辺など計3カ所の付着物から第三者のDNA型が検出されたとする鑑定書を 新証拠として東京高裁に提出したことを2日 明らかにした  提出は1日付   


東京高検は優先的に追加鑑定を進めている物証15点のうち 5点の結果を弁護団に開示していた  検出された第三者のDNA型は 遺体の体内から検出された体液や現場に残されていた体毛のものと一致   いずれの場所か
らも マイナリ受刑者のDNA型は検出されなかった  
弁護団は 被害者が第三者と現場に行った可能性を否定した確定判決に「合理的疑いがあることは明らか」と主張   再審開始とマイナリ受刑者の釈放を求める申入書も2日付で東
京高検に提出した  


ネパールのニュース

出稼ぎトラブル続出

ネパールの一般庶民が祭で浮かれている間 海外ではあまり思わしくない事件が発生した  エージェントを通さずに東南アジアに渡りビザが切れているのに居座り続けている不法滞在者がいるという  特に国土が広く人口が少ないマレーシアでは ゴム園などのプランテーションは絶好の隠れ家  増え続けるネパールの不法滞在者たちはこの先どうなるのだろう  海外に出稼ぎに行く場合 通常国公認のエージェントを通さなければならない  エージェントの利益も大きいが 税金もばっちり徴収される  何度かこのコラムで書いたが 出稼ぎはネパールの外資獲得のドル箱  エベレスト登山の比ではない  正当な手段で海外に出稼ぎに行き 真面目に国に税金を納めているネパール人はこのニュースに怒りを感じている


何かが変わるかもしれない 新首相に大きな期待

先月号でお知らせしたネパールの新首相 ドクター バタライの人気が急上昇  一般国民にアピールする術がやたらと巧い  ゴールデンアワーの8時に ネパール国営放送の国民電話リクエストなるものを開設  今後のネパールの政治 経済 教育など 国民が電話でじかに首相と対話する  様々な意見が出るが ほとんどの人は政党間の派閥争いは気に入らないようだ  また 小学生がお酒やタバコは害になるのにどうして酒屋やタバコ屋の営業を廃止しないのですか?との質問  

ドクター バタライは検討しましょうと返答  

電話をかけてくる人もまたバタライ新首相にドクターの称号をつける   日本だと「先生様」と言うところか クス


和平プロセスに期待を寄せたいところ

バタライ首相はリパブリカ紙のインタビューの席上で 過去5年間で与野党がここまで歩みよりができたのは初めて さらに懸案事項の解決に限りなく近づいていると発言  その一環として先日 ネパール国民会議派 ネパール共産党 ネパールマオイスト派との会合で マオイスト派軍隊が旧ネパール国軍と併合することは 個人の自由意志にまかせ 退役希望者には相当額の退職金を支払うことに合意した  


新憲法の行方

こちらの方は相変わらず何の進展もなく ネパールはいまだに無憲法の国家が続いている  憲法制定期日を何度も延長しているが次の3ヶ月は無理  来年の4月ごろには制定されるだろうとのこと  国のかしらばかりコロコロ変わるが 国家の骨子に当たる憲法がいまだに定まっていない  当然のごとく国民は憲法にも政治にも失望を感じている  


ネパールマオイスト党の党大会終了

裏でかなりハードなネゴがあったものと見られるが 学生さんたちのような只のウチゲバとは違う  ほとんどが収まるべきところに納まったようだ  ただし超過激派だったキランは解任  以下プラチャンダ書記長 副議長 モハン バイディア等


自前論評  ネパールの女性は幸せか?

ティージを祝う

ネパールには毎年9月頃女性の日(ティージ)というヒンズー教の祝日がある  

この祝日では既婚女性は 夫の長寿を祈念して断食をし 未婚の女性は素晴らしい男性と結ばれ 幸せな結婚生活を送れるよう場合によっては断食して願う  


その儀式というのがも超すごい ティージの前日 女性はものすごく盛大に人によっては肉などを食べる  いや胃袋に詰め込む  何しろディージ当日は夫のために断食をするからだ  当日 既婚女性たちは老若問わずスパンコールでビカビカの真っ赤なサリーをまとい 重そうな緑色のビーズのネックレスを首からだらりとたらす  そしてパシュパティナートなどヒンズー教のお寺に詣で ついでに踊りの群集にまぎれこむ  皆楽しそうではあるものの水分を取ることも許されず 自分のつばも飲んではならずで暑い盛り本当に苦しそうだ  


彼女らはひとしきり飲み食いせずに踊り 日がかげるころ自宅に戻る

フーやっとご飯にありつける  その晩もヒンズーの女性たちは盛大に食べる  何しろ明日は自宅で夫の為に祈りをささげ またしても断食をせねばならないからだ  


本当にすごい祭  そこまで愛せる男にいまだかって出会ったことがないので 彼女たちの夫思いには驚くが  ティージのために新しいサリーやビーズのネックレスを当然のように買ってもらえるし またティージの間は炊事洗濯から免れられるのは大きな魅力


生理は穢れ?

上記の祭と似たりよったりの習慣ですが 既婚未婚を問わず ヒンズーの女性たちは月々の生理が来ると3日間ほど 別の場所にこもります  もしくは同じ家屋の中で別室  女性の生理の血は穢らわしいと言われているからです  この間は別の人に調理をさせなければなりません  夫が3日間早めに帰宅して調理したり 息子や娘が調理することもあるのです  むろん炊事ばかりか洗濯もする義務なし  ここまで書けばネパールの女性って大らくちん と思えなくもないのですが せっかく夫に作ってもらったご飯をいっしょの食卓で食べることが許されず 納戸や別室で食べなければならないのは なんか侘しい感じ  でも夕飯の支度から逃れるのは大きな魅力じゃないかなぁ


遠い声  ドルガ ラール シュレスタ選詩集  翻訳 藤井正子氏

@ 現在と未来

   乾ききって感情のない その眼を

   無から無へさし渡された物干し竿にぶら下げて

   長老は 骨と皮でできたそのガタガタいう袋は

   窓の敷居に座り込んでいた


   その光景はひどく私の神経を苛立たせ

   真昼時にもかかわらず

   夕べの祈りの声が

   耳いっぱいに鳴り響いた  


1
989


A 祖先の声

新年を祝う儀式の中で 私はあなたの健康を祝い

あなたの座る敷物の前に 曼荼羅を描いた

あなたはあざ笑うかも知れないが

心を開いてじっくり見るなら

そこに表された黄金の魂が見えてくるだろう


そしてあなたは 自らの心の内をのぞき込み

一瞬 怯むのではあるまいか

まるで 初めて自分に出会ったかのように

その胸が この魂を受け止めるには小さすぎるかのように


祖先が残したものの偉大さは あなたを高々と引き上げ

サガルマータの頂でさえ 跡形もなく消え去るだろう


長い間 救いを待ち望んできたものは誰か?

あなた方は声高らかにそう答えるだろう

我われこそが その者ですと


こうして毎年 この儀式に連なるとき

あなた方は誇りをもって確信するだろう

この世界の中で 我われはにも劣るものではないと


1989


B 殉教者

   不思議なことだが 時の流れは

   「一瞬」をこうしてもたらす

   その瞬間 松明の火が赤赤と燃え上がり

   どんな風もそれを消すことはできない


   その光があまりにもまばゆい故に

   彼らは父母も妻も そして子どもも見えてはいない

   もの事をあまりにも高いところから見ている故に

   自分の事さえ 見てはいないのだ


   ああ そのとき

   束の間だが 強烈な一瞬

   そこで彼は見る

   首吊り縄が 自国民の首を絞めるのを


   彼は飛び出していく

   弓から放たれた矢のように 振り返ることもなく

   大砲が静まり 自由が勝利に微笑むまでは


1990年


NBSAネットニュース 編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住

2011年11月7日

NBSA: http://nbsa.sakura.ne.jp/


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