―――
 NBSAネットニュース 2012年7月号 ―――



ネパールの視覚障害者を支える会(NBSA)の会員 支援者の皆様 

やっと恵みの雨が降ってきましたよー

ネパール全土異例の猛暑に襲われ 野菜やとうもろこしなどは大打撃 当然のように

物価が超高騰しました  先日八百屋で小さなジャガイモ5つ にんじん2本 玉ねぎ2つ 小さなキューリとしなびたキャベツを買ったら80ルピーでした  日本円に換算すると80円程度  日本に住んでいればふところが痛む金額ではないのですが ネパール人の収入にたとえれば軽く1千円くらいに当たるでしょう  家計のやりくりが大変なようでした  



いよいよ田植えのシーズン お百姓さん頑張ってください  秋にはおいしいご飯が食べられますようお願いしますね



さて 本来 ネパールは世界第2の水資源に恵まれた国だそうです  5月を境にヒマラヤの雪が溶けてくる 山麓に住む人々にとってはありがたい話ですが 残念ながらその豊富な水を全国に配給する技術がない 資金もないのがきつい カトマンドゥ盆地の計画停電 現在1日6時間と 給水制限はいまだ続いています  



6月の現地活動報告 

定例活動 

@オーディオライブラリー事業 

ついに完成しました 公務員試験 問題集  これは有無を問わずに これ絶対に必要なので音読してください と今年の2月に分厚い本を持ち込まれたのがきっかけです  スタッフ一同あっけにとられましたが何とか完成しました  その間に何度も政治的なゼネストなどあり 女性の朗読者は外出を躊躇  けっこうきつい仕事になりました



何度か書かせていただきましたが 視覚障がい者のために録音図書を製作することを音訳と言います  私たちは色々な人に視覚障がい者が何を必要としているかを理解してもらいたいので 学校の教材などは通学先のクラスメート等にお願いすることが多々あります  しかし 今度の本はあまりにすごいボリューム  クラスメートには頼みにくいし 引き受ける側も躊躇してしまいます  そこでこの本の音訳に踏み切ったのです  ちなみに2番目に長いのはネパールの文豪ダーヤマン シャムシェル氏のラナの白い虎  こちらはたくさんの人が聞いてくれました 



A点字情報誌タッチ

30号準備は終わりましたが 最終の編集会議がまだ少し残っています  これが済むと発送します  編集会議はネパール語点字の達人の年配役員が行うので 会議の日程を組むのが難しい  日本語点字も同じような面があるようですが 表現の仕方等がまちまちで まだまだ改良の余地があるようです

もっとスムーズに行くようなアイディアはないものでしょうかね   



役員会 6月3日

私が日本から戻って来て初めての役員会でした  5月中は目一杯バンダ(ゼネスト)決行され 役員が集まる機会がなかったので けっこう盛り上がり半分は雑談で終わってしまいました  討議された内容は2012年度の特別事業 訓練自立訓練会やクイズコンテストの日取りなど 特別事業の確認など

役員全員が30歳中盤になり かなりしっかりしてきました  NBSAは我が人生の1部になった と言う役員もいて頼もしい限り  安心して引退できそうな気もしてきました



賛否両論 あなたはどう思う? 

先月号でお知らせしたブラインド レストラン あっと言う間に閉店になってしまいました  営業したのはわずか2週間  このレストランは在ネパールの欧州の人が始めたのですが 資金が底をついたとのこと  現在イスラエル大使館が資金提供を考えているそうです  何しろ様々な新聞でこのレストランが紹介されたので  



聞くところによると レストランのメニューがいわゆる洋食で 少なくとも1食千円  地元の人の使用率ゼロだったそうです  ちなみに米国と欧州にこの手のレストランが数件あるそうですが 安全面が少々気になります  室内には灯りが全く無く 視力に障がいのある人と同じ条件で食事をしてもらおう と言う趣旨だそうですが お客が不意に立ち上がった場合 スープなどがこぼれるなどすると ウエーターもお客さんもケガをする可能性があるでしょう  日本ではたぶん営業が許可されないと思います  



そこで「視覚障がい者に似合った仕事は他にもあるのでは?」と訊ねてみました  

とりあえず日本を例に 針灸マッサージ 電話交換手 会議の速記 PCオペレーターなどを例に挙げてみましたが 反応は意外に厳しく「外国の例は知っている でも我われが一番欲しているのは そうした技術者になることではなく現金収入だ」 

と言われてショック  さらに このレストランに就職できなかった学生が「店は潰れちゃったけどいいよなー ぼくらの仲間の何人かは たった数日だったけど 自分の力でお金稼いだのだから」と言っていました  



ちなみにNBSAカトマンドゥ事務所には 常に30個ほどアイマスクを置いてあります  新しいボランティアは一度は必ず アイマスクを着用し  見えないこととはどんなことか そして視覚障がい者をどのようにサポートするかを体験してもらいます  ご興味のある方はお申し出ください



ネパールのニュース

SLC狂想曲 無残なり 受験戦争の犠牲になった7人の少女たち

ネットニュース4月号の続編です  中等学校終了試験SLCの結果がでた 合格者47.2パーセントとかなり厳しかった  これまで田舎の方に行くと 女の子はいずれ嫁に行く これ以上勉強せんでええわとSLC試験を受けさせない親が減った  そして田舎の学校の合格者が上がった  こりゃええわと簡単に喜べない現象がカトマンドゥなどの大都会に起こった

 

それは受験に失敗した 都会の女の子7名が自ら命を絶ったことだ  女子の進学はカトマンドゥでは当たり前になりつつある それと共にプレッシャーも競争意識も拡大した  お受験勝ち抜き組みも容易ではない  進級する学校見学に親も子も奔走し 毎日疲れきっている 予算 上級学校への進学率 ネームバリュー 交通手段 最終的には外国留学先のプランも考慮しなければならない  ネパールには国立大学もあるにはあるが そこではハクがつかないし就職口もない  そして海外に留学しても 学費 生活費は自分で稼がなければならいと言う過酷な現実  時には不良外国人と呼ばれる青年のバックグランドには こんないきさつがあるのかもしれない 



お待たせしました  NBSAネットニュース 今月号で一番気になる話題

17年目にしてやっと祖国の土を踏んだ ゴビンダ マイナリ氏  

ネパール各紙トップ報道でしたが意外に冷ややか 一般の人も意外に冷ややかな反応だったようです  以下大衆日刊紙ナガリックのトップ記事を翻訳しました



15年目にして釈放されネパール人 ゴビンダ マイナリ 

プレム ダカール 2012年6月8日 カトマンドゥ



殺人容疑で終身刑を言い渡され 15年間日本の刑務所に服していたネパール人 ゴビンダ プラサッド マイナリ氏を東京高裁は再び自由に与えた 裁判長ショージ オガワは 注目を引いていた殺人事件の容疑者ネパール人男性をの再審を命じ 釈放を決定した  裁判長はマイナリ氏は1997年 東京電力(TEPCO)社員の殺害事件に関わっていた可能性を示唆しながらも無罪の可能性もあることも示唆し 新しいDNA鑑定を元に釈放を決定した  ネパール人法律家バブラム シュエスタ氏は マイナリ氏が逮捕された当時は 信憑性の高い化学的証拠が不十分であり 裁判所では2度マイナリ氏の釈放を訴えたが検察官がこれを拒否した マイナリ氏の始めの拘束は滞在許可が切れた1997年 その後殺人容疑で逮捕された 



ゴビンダ マイナリ氏の夫人ラディカ氏の日本訪問は数回にわたり  今回は二人の娘を伴って訪日  今回こそはと釈放の可能性を信じていたと語った  通常日本の刑務所では15分しか面会時間を与えないが 再審前の訪問では45分の面会時間を与えられた 「今度はきっとよい評決がでるだろう  何も心配するな みんないっしょにネパールに帰れるだろうから」とゴビンダ氏は語った



ヒューマン インターナショナル会長 ゴパール クリシナ シワコット博士は 1997年に逮捕拘束され  以来再裁判を重ね 再裁判評価をさせたことは 世界中の出稼ぎ労働者のための画期的な決断だと語った  さらに 日本の司法部は非常に保守的で かなり確実な証拠が無い限り再審を命じない  日本のメディアは 「死刑もしくは第2次世界大戦後初めての再審である」と報じた 



これは推測であるが法廷はマイナリに日本から退去するか否かを問わずに拘束し続けたのではないだろうか  その背景にはネパールと日本の間に逃亡犯の引渡し条約がないことにあるだろう  また 99%の有罪率をもつ国において無罪判決を出した という事実はゴビンダ氏が絶対的に無罪であった事実を立証するものであろう  



ゴビンダ氏は2007年4月に無罪判決を受けている  それにもかかわらず彼が殺害された女性と関係があったことなどの理由から 無罪の証拠不十分として終身投獄が確定された  東京高裁は これまで検察当局により提出されずに 明らかにされていなかった重大な2片の証拠の再試験を再度命じた  2011年7月のDNA鑑定では 女性の身体から集められた精液 唾液や体毛のサンプルが ゴビンダ氏のものと一致せず 殺人が起こった時に別人によりつけられたものであったと発表された  ちなみに その唾液と血液型は0型  ゴビンダ氏のものはB型である



故国に戻ったゴビンダさん

帰国前からゴビンダさんが巻き込まれた事件について 色々取りざたされたが ほとんどのネパール国民は温かく彼を迎えたようでした  その反面 これから海外に出て行出稼ぎ労働者や留学希望者は わが身にこのような事件が降りかかったらどうする と不安に思っている人々もいました  年配の人は無事に帰れてよかったと温かく迎え 若い人たちは 所詮売春に関わっていたならず者と冷たい反応  6月のシトシトと降る雨のように 様々な人が様々な思いにふけったようです



ネパール関連ニュース 今月はゴビンダさんの記事が満載でしたのこれ2点に絞らせていただきました

伊ヶ崎忍写真展 「INAY TOL」銀座に銀座ニコンサロン  

カトマンズにある王宮裏を流れるビシュヌマティ川沿いには 地図にも載らないほど小さなイナヤ通りと言われる場所がある  そこはネパールの原住民族とされているネワール族たちの中でも非差別階級に属するカサイといわれる人たちの水牛の屠場が密集した地域である  イナヤとは屠殺業の意味がある  そんなイナヤ通りで繰り広げられる日常を通して生きることやこの国の姿を見つめ続けたのがこの作品である  



人は生きものを食べる その本能には何者も抗えない  人が存在している以上 生きものを屠ることは未来永劫消滅することは無い  それは 国や民族や階級、宗教の違いを軽々と超える普遍性だ  屠場とは生を感じることの出来る場所の一つなのだ  

カラー約25点 モノクロ約25点 (写真展情報より)
名称 伊ヶ崎忍写真展「INAYA TOL」
会場 銀座ニコンサロン  

住所 東京都中央区銀座7−10−1 ストラータギンザ 1階 2階 ニコンプラザ銀座内  
会期 2012年7月4日から7月17日

時間 10時30分から18時30分 最終日は15時まで
休館 会期中無休
デジカメ Watch 折本 幸治



ヒマラヤ雪男は チベットヒグマ だった 登山家たちはなぜ騙されたのか

J−CASTニュース 6月14日配信



雪男 イエティ もしくはメテ といえば 現在もヒマラヤ山脈などで目撃情報が出る 謎の未確認動物だ  その姿は大型類人猿とされたが、登山家の根深誠さんが近著で、イエティの正体は、日本の動物園でも飼育されている熊の仲間の「チベットヒグマ」だと明かした  イエティがヒグマだと明らかにされなかったのは いくつかの理由があるという  なぜ真相は隠されてきたのか  

毛皮や足はクマのもので頭蓋骨は人間のもの
根深さんの著書は イエティ=ヒマラヤ最後の謎 雪男の招待 山と渓谷社刊 2012年6月中旬に発売  根深さんは白神山地の保護活動で知られ 30数年のヒマラヤ登山歴がある  90年代から本格的にイエティの正体を探っていた  ポイントとなったのは イエティはSFではないということ  実際に見た探険家や 捕まえたという地元民が存在するからだ  根深さんがチベット周辺の村や日本に持ち込まれたイエティの足」 毛皮 頭蓋骨と言われるものを鑑定したところ 足や毛皮はクマのもので 頭蓋骨は人間のものだった  ネパール西北部にあるツァルカ村で イエティの写真があるというので行ってみたところ それはヒグマであり 載っていたのは北京で出版された漢方薬の図鑑だった  イエティを殺したことがあるという別の村を訪ねたら クマに似ていた などと言われた  

こうした研究から根深さんはイエティが日本の動物園でも飼育されているチベットヒグマだという結論に達した  そして、なぜ現在に至るまで チベットヒグマがUMA

の扱いだったのかについて様々な見解を述べている  まず 原住民がクマにあまり馴染みがなく それをイエティと信じ 民話や宗教などと結び付けていたこと  やがて世界的に話題になり 観光資源として存在価値が高まったこと  さらに 正体不明にしたことで利権のようなものが生まれたのではないか とも分析している  

正体を隠すとクライアントから援助が出る?
それはイタリアの著名な登山家R.メスナーが2000年に出版した著書に書かれている  1930年にイギリスの登山家がイエティの足跡の写真を発表しセンセーション
を巻き起こしたが ドイツの物理学者Eシェーファーがこの足跡の正体はチベット ベアだと証明し著作も出した  するとイギリスの高名な登山家2人がシェーファーに対し 英語の出版物での公表はやめてほしいと懇願したという  理由はイエティの正体が分かれば クライアントの出版社がエベレスト遠征の費用を出さなくなるから というものだった  根深さんはこの著述が真実ならば 「それとも知らずに 後世において冒険ロマンを追い求めた冒険者は ことごとく茶番を演じたことになる  私もまさにその1人だった」と書いている  

それでもイエティは存在すると考えている人は世界中に存在する  ゴリラのような生き物だとか 身長3メートルもある約10万年前に絶滅した巨大類人猿ギガントピテクスの生き残りではないか と主張する研究者もいる  昨年11月にはロシアや米国 中国など7カ国の研究者が参加したイエティ捕獲の国際会議がロシアの西シベリア ケメロボ州で行われた  そして今年1月 イエティが捕獲されたというニュースがロシアで流れた  動物園で公開されるというものだったが これはロシア南部のイングーシ共和国の労働社会発展大臣の狂言で 動物園の檻に入っていたのはゴリラの着ぐるみをまとった動物園職員だったため 来場者は大きな失望を味わったという 

 

本当にいるんでしょうか 雪男さん 真相はともあれひとり暮らしは寂しいでしょう?と言って集団であちこち歩きまわれるのも不気味  この辺でイエティさんをほっとくのはどうでしょうか



ネパールの詩

遠い声  ドルガ ラール シュレスタ選詩集  翻訳 藤井正子氏



@ 観覧車

   私は 知らなかった

   人生というものが これほどくるくるとその色合いを変えるとは

   昨日 命のために戦った私が

   今日はその命にぶら下がっている

  

   どれほど多くの赤い川を渡ったことか

   どれほど多くの火の山をよじ登ったことが

   悲しみの道でさえ 私は笑いながら歩いた



   今はこんなありさまだから

   私はしばし涙を通り越して 微笑んでみせねばならない

   どんなに多く蓄えようと 見せるほどのものは何もない

   だが ほかに何ができる?



   心よ なぜ私をこの観覧車に乗せて面白がるのか

   昨日まで世界はすべての自分のものだと思っていた

   今は 自分が自分であるとさえ思えない

   もし 心が放り出せるものなら 

   人生はあのメリーゴーランドになるだろうに



1996



A若い女性からの手紙

   遠い国から届いた 若い女性の手紙

   そこにはひと言も書かれていなかった

   私の写真が一枚だけ ほかには何も



   何も書かれていなかったけれど

   そこに何かがあった

   彼女の手で投函されたこの手紙

   それを見ながら 私は

   彼女がそこに封じ込めたものを拾い集めた



   言葉も異なり 年代も肌の色も違うけれど

   その手紙は 彼女と私が

   同一であるかに感じさせだ

1997



B農夫へ

   農夫よ 君こそは

   私の詩集に加えられなかった あの詩だ

   どんな音楽の手法によっても捉え得なかった あの歌だ



   実っている果実 満開の花  畑を飾る作物

   それらはすべて 形を変えて君を表している

   君はあまりの豊穣で

   私の理解をはるかに超えている



   結局 私が誇りをもって表現したあの文化は何なのか

   君の歌や踊りが

   人生にもたらしたものでないならば

   君なしでは この国の将来を夢見ることさえ私にはできない



   創造的な芸術の花 君は生命に高貴な香りを与える

   正義と平等のために最初にあげる声は

   まさに君の声だ



   世界を目覚めさせる その君自身が

   いまだ眠りから覚めていないとは

   何と皮肉なことだろう



1997



ネットニュース6月号でお知らせさせて頂きましたが 都合により日本の窓口を6月1日より変更させていただきました

住所:千葉県柏市 松葉町 6−8−1 (電)04−7136−0505

(ポコアポコ気付:ネパールの視覚障害者を支える会)



NBSAの活動内容 その他のご質問等は以前と変わらず カトマンドゥ事務所に直接ご連絡ください 

nbsa@mail.com.np 
又は yorikonepal@hotmail.com よろしくお願いいたします



NBSAネットニュース 編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住



2012年7月7日



NBSA: http://nbsa.sakura.ne.jp/



本会の活動や最新版の会報誌を更新しています  ぜひご覧ください



NBSAネットニュースは音声パソコン対応編集をしています



NBSAネットニュースは会員以外の様々な方に流しています  受信をお望みでない方は ご面倒でもご連絡ください