――― NBSAネットニュース 2012年9月号 ―――



カトマンドゥはすっかり秋

なぜか毎日集中豪雨が到来し 少し肌寒いくらいです 皆さんはお盆の休みをどのように過ごされましたか  暑い夏の盛りの外出がさぞ大変だったこととお察します 

 

当地では9月の後半から約2ヶ月近く お祭りが続きます ほとんどが宗教に由来する祭りなのですが 空気も爽やに 三角の凧が空中高く舞い 誰もが収穫後の実りの秋を謳歌します  そして神々へ敬虔な祈りと感謝をささげる時期でもあります 



この時期カトマンドゥを訪れる人々にとっては レストランなども休業するので 食事がちょっと不便です  でもご心配なく  お知り合いや現地で友達になった人がいると 宗教にかかわりなく そして分け隔てなく親切に付き合ってくれ 時には食事に呼んでくれます 



このように ネパールの人々と心温まるお付き合いを重ねて ネパール滞在が14年以上になりました  それもひとえに ネパールの視覚障害者を支える会を応援してくださっている日本の皆様 そしてヒンズー教 仏教 イスラム教 キリスト教等の様々な神々を信じる 心温まるネパールのサポーターがいたおかげ と深く感謝しています  あらためて御礼申し上げます  渥美 よりこ



8月現地活動報告 

定例活動 



@    オーディオライブラリ事業 

先日ご紹介したNBSA事務所に来た やさしいお姉さんが不意に来なくなりました  原因はお父さんが重い病気にかかり 看病するためだそうです  このあたりの親族関係 親族愛と言うのはすごいですね ネパールは  家族内で交代とか代替が きかないのです  でも一般の会社でも 簡単に看病休暇がもらえる  うらやましいかぎりですね  本の音訳者に今のところ困ることはないようです



A点字情報誌タッチ 

31号完成  早速郵便局に持ち込みました  前年度はプリンタの故障 点字タイピストの不足などで大変苦労しましたが このとことろボランティア長のニルマルがかなり熱心に働いているので 今年こそは目標の年間6回の出版が可能になるかもしれません 大いに期待しているしだいです



Bその他の事業  

役員の多くが 全国障がい者連盟の総会に出席しました  

毎年なぜかこの総会はけんか沙汰になりますが 今年は比較的穏やか閉幕したようです  日本でも同じような経過があったと思いますが ネパールではこうした運動の過渡期を迎えたようです  



雨がひどくて ガイジャトラ 延期 

昨年かなり盛り上がった物まね大会のガイジャトラ 今年は大雨になり中止となりました  1年に一度の楽しい事業だったので 少々がっかりです   

こどもの日クイズ大会 準備開始 問題集の作成完了

恒例の9月15日のクイズ大会の下準備が終わりました 今年は地方から学童をカトマンドゥに招き どんと盛り上げたいと思っています



8月2日ネパールの視覚障がい児の教育支援をする会 ラリグランスクラブの寄宿舎を訪問しました  

視力に障がいのある女の子 スナちゃんと マニシャちゃんは親元から離れて暮らしています  親元から離れての生活 寂しくないのかなーと思っていたのですが キルティプル郊外の素敵な寄宿舎に 寮母さんと一緒に住んでいました  何よりいいな と思ったのは寮の雰囲気がとても家庭的だったこと  そして寮生ふたりのお嬢さんたちがのびのびしていたこと 



NBSAから 英語点字の短編と長編小説 点字の迷路や小説のCDを寄贈をしました  通常NBSAが作成しているトーキングブックはちょっと大人向けなので 比較的短い小説 それにネパール語版の日本昔話も混ぜました  彼女たちはどんなCDが気に入ったのでしょうか 次に訪問するときに聞いてみましょう  また 彼女たちは歌も披露してくれ それがまた上手  楽しい時を過ごさせてもらいました   ぜひまた訪問させていただきたいです 



余談ですが ネパールでは鶴の恩返しが好きな人が多いようです  鶴が身を挺してまで恩を返そうとする姿は確かにすごい  援助漬けのネパール政府高官にも送りましょうかね  


ポカラへ行ってしまった NBSA奨学金生のKP君

もう10年近く前になりますが NBSAは大学レベルの視覚障がい学生に年間10人にも及ぶ奨学金を支給していました  大学を卒業できなかった学生はひとり 他の9名は皆見事な成績で卒業し 全員が国語や音楽の教員として仕事についています  それから数年後 ネパール全国障がい者連盟を中心にした運動で ネパールの文部省は公立学校の教員はその能力さえ備わっていれば 障がいにへだてなく雇用を認める と言う条例を発布  私たちはどんなに喜んだことか  現在400名余 視覚に障がいのある教員が全国にいるそうです  



KP君もその一人でした  ダディン郡の学校に勤務するかたわら 近隣の視覚障がい児を集めて盲学級を設立  数回見に行きましたが運営が軌道に乗っているようでした  

先日そのKP君から長距離電話があり ポカラ市のアマルシンハ盲学校に転勤しました と報告してくれました えっまさか  非常勤講師かな?と思ったのですが正規の教師とのこと  何かあったのかなぁ? でも彼としては ほっとしているのかも知れません  正直言って少し寂しいです  



ネパールのニュース

広がる外食産業 ファミレス大人気

ネパールでは 各自が所属するカーストなどがあり 他のカーストの人が作った料理は口にしない風習がある  ところが数年前から夕刻 バサンタプル広場周辺に屋台出没  焼きそばや餃子など 新聞紙で作った3角の袋に入れてもらい その場で立って食べたり 家に持ち帰って食べたりと様々 



さらに ファミレスが人気者  外食産業が爆発的に増えたので 食事の習慣が 急速に変化したように見られます  なんとピザハットや ケンタッキー フライドチキンの出前もあり  当然のことながら マクドナルドはベースが牛肉だから店舗なし  カトマンドゥではインドのように 作る人のカーストを気にしない風潮が定着しつつあるようです  ところでなぜでしょうねー 外食のときはご飯をスプーンで食べる人も増えてきた気がします  でもこれはいい習慣になるかも知れません  ネパールではほとんどの人が手でご飯を食べますが 食事の前に手を洗うのを忘れる人が多い  食後は手がねばるので手を洗うのですがけどね  



8月17日は父の日でした

父や夫の健康を祈る儀式が 今年もバグマティ河畔のパシュパティナート寺院で行われました  家庭ではおいしいご馳走や練菓子などが用意され どの家庭も楽しい一日を過ごしたようです  お父さん 夫がいない家庭では ピンチヒッターで おじさんなど 年長者が借り出されます  ネパールの儀式 柔軟性があって面白い



汚職疑惑がひろがる ネパール共産党毛沢東派の幹部たち 

ネパールの新聞記事は 案外ガセねたでも平気で掲載することが多いので 時にはまるで信憑性がない場合がある  マオイスト派党首のプラチャンダの資産は数千億円である  バゲラム バタライの資産も相当なものと言われているが はてどのような基準で資産を換算したのだろうか? 旧マオ派の拠点だったロルパ全てを売ってもまだ足りない  インド共産党や中国からキャッシュをもらったとも思えない  政治家と言う者は はじめ崇められていたも こき下ろされる時は痛烈なんですねー



日本政府等が支援する電源開発プロジェクト
ネパールは電力不足に恒常的に悩まされており 雨季の8月現在も8時間停電が実施されている  乾季になると一日10時間から17時間の計画停電になる  電源開発には膨大な時間と資金が必要とされるため 政府も計画はあっても実現に二の足を踏んでいるのが現状である 



その数ある計画の中で140MWを産出 タナフン 電源開発計画が日の目を見るようだ  もともとこの計画は 上部セテイ川電源開発プロジェクト として日本政府が支援への関心を示していたもので 規模が大きいためADB(アジア開発銀行)とEIB(ヨーロピアン投資銀行)が協調することになった  



ネパール政府も実施機関であるNEA(ネパール電力公社)に対し融資を行う  NEAは諸手続を完了後 2014年3月から開発をスタートし2024年には運転開始にしたいとしている  



ネパール航空倒産か

懐かしい と思われる方が多いと思いますが 数年前には関空 カトマンドゥの直行便があり 大変重宝していました  ネパール航空は55年間ネパールへの窓口として営業していたのですが 営業が難しく毎年赤字を続けていた  機体も古く外国から飛行機を借りて営業をつないだが いよいよ倒産になる公算がたかい  



毒蛇をかみ殺した男

去る8月23日 猛毒を持つへびにかまれ 激怒した農家の男性が 仕返しにへびをかみ殺した事件が話題になった 何と果敢な行動と 各新聞で報道  

首都カトマンドゥの南東200キロほどにある村に住むモハメド サルモ ミヤさん(55)は21日日午後 村の近くにある水田で農作業中に 猛毒を持つ白いコブラにかまれた  警察当局によれば 怒りを爆発させたミヤさんはヘビを追いかけ 自分の歯でこのヘビをかみ殺したと言う  その後現地の医療施設で手当てを受け 現在は自宅で療養中  モハメドさんによると「噛み付かれたので頭にきた  歯には歯を 棍棒で叩き殺すなど やわなことでは気がおさまらなかった」 とのこと


ネパール関連ニュース



結婚を強制される少女 世界に5100万人 写真家が悪習廃絶訴え

8月7日 CNN 配信

「できることなら学校を出て先生になりたかった」

アフガニスタンの11歳の花嫁は40歳男性との結婚を控え 写真家にそう語った  得意な学科は地元の言葉のダリ語  結婚のために退学しなければならないと 悲しそうな表情を見せた  

同じような境遇の少女は世界各国で5100万人に上る  写真家のステファニー シンクレア氏は各地を旅してそうした子どもたちの姿をカメラに収め 写真集を出版した  

アフガニスタンで幼い時に結婚させられた少女たちの夫婦生活について尋ねると 多くの場合 夫は妻が成熟するまで待つとの答えが返ってきた  しかし女性たちはこっそりと 実際には未成熟な妻が相手をさせられていると耳打ちしたという  

イエメンでは6歳の時に軍人の夫と結婚させられた少女を撮影した  結婚式の当日まで自分が結婚することは知らされず 結婚してしばらくの間は「夫の姿を見るたびに身を隠した  顔を会わせるのが嫌でたまらなかった」という  

シンクレア氏は 子どもを結婚させる悪しき伝統はこうした一部の文化に深く刻み込まれていて 家族も子どもを守ってくれないと語る  

イスラム教国以外でも エチオピアのキリスト教の集落では14歳の少女がラバに乗せられ 逃げ帰る道が分からないようにと顔を隠されて連れて行かれる光景を取材した  

インドやネパールではヒンドゥー教の5歳の少女と姉2人の合同結婚式が行われていた  少女だけでなく少年も幼いうちに結婚させられることがあるという  シンクレア氏は 自分の写真をきっかけとしてこの問題に脚光を当て 悪しき伝統を変えさせたいと話している  



マンダラ展 仏教世界 視覚的に表現 県立歴史博物館 9月2日まで開催 

毎日新聞 8月10日配信

仏教世界を視覚的に表現する国内外の絵画や彫像を集めた「マンダラ−チベット ネパールの仏たち」展が 県立歴史博物館で開かれている 

マンダラとは 大日如来などを中心に据えて各種の仏や菩薩などを同心円状に描き 仏教世界の広がりを図像化したもので 仏教儀式や修行の際に掲げられる  悟りを求める修行者らが見つめ 自分の中に仏教の宇宙観を思い描いていく  



同展では 日本だけでなく ネパールやチベットなどアジア各国のマンダラ絵画や彫像を紹介  それぞれの作品には 馴染み深い座禅姿の仏はもちろん インドなどに広がるヒンズー教が由来の珍しい神々の姿も見られ 地域ごとに違った個性も楽しめる  赤や黄 緑など鮮やかな色彩で細密に描かれた作品群を見つめていると 独特な世界に取り込まれるような不思議な感覚が味わえる  
 同館は 「見学者には 仏教文化の多様性を学びながら日常を離れた世界観に触れる空間で「いやし)」も感じてほしいと話している



東電社員殺害 再審第1回公判は10月29日

毎日新聞 8月28日配信

97年の東京電力女性社員殺害事件で強盗殺人罪で無期懲役となり 8月に再審開始が確定したネパール国籍のゴビンダ プラサド マイナリ元被告(45)について 東京高裁(小川正持裁判長)は再審第1回公判を10月29日に開くことを決めた  28日に高裁であった検察側 弁護団との3者協議後 弁護団が明らかにした  

元被告は1審無罪(00年4月)となったが 同12月に東京高裁が逆転有罪とし 最高裁で確定した  このため再審は控訴審で行われることになり 1審無罪判決の当否が審理される  控訴審には被告の出廷義務はなく 弁護団によると 既に帰国した元被告に出廷の意思はないという  

検察側は再審公判で改めて有罪主張をする方針だが 死刑か無期懲役とされた戦後の重大事件の再審で有罪となった例はなく マイナリ元被告に無罪が言い渡される可能性が高い  

弁護団によると 高裁は検察側に10月22日までに控訴趣意書の補充書や新たな証拠請求となる「事実取調請求書」などを出すよう求めたという  



ネパールの詩

遠い声  ドルガ ラール シュレスタ選詩集  翻訳 藤井正子氏



@ 対比

ある日 家のそばを歩いていると

まったく対照的な二つの光景に出くわした

それは 八十路をとうに越え

皺が寄り 腰の曲がった二人の老人によるものだった



ひとりは聖歌を口ずさみつつ 寺のまわりをゆっくり巡り

神々の一つ一つに頭を下げて拝んでいた

彼の顔は純真さに輝き

まるで全ての罪が洗い清めれたかのようだ



もう一方は やんちゃ者よろしく 窓の手すりに両肘をつき

機嫌よく口笛など吹きながら

植木鉢の砂利をつまんでは 下を通る女に投げつけていた

「地獄に行っておしまい!」と 腹立ちまぎれにおんなが怒鳴れば

彼はいんぎん無礼に答えた

「はいはい あなたの後からね」



同じ世代というのに この二人の何たる違い

どちらがまともなのか おかしいのか

私にはわからない



一人は神に米粒を もう一人は女に石つぶてを

それぞれの気の向くままに投げている



二人の老人の上に 私は白昼夢を見る思いがした

まるで薄暗い夕暮れが

夜明けの型を鋳造しているかのような  

1997



A過渡期

   大気は 落ち着きのない静けさに覆われていた

   卵の上に座り込んでいる雌鳥のように

   まだ孵らない雛鳥のかすかな鳴き声を聞こうと

   卵に耳を当てている雌鳥のように

   夢うつつの大気は その心の眼を開き

   未来が

   現在の扉をノックしているのを

   1998



B最後の触れ合い

   いまわの息で詩を紡いだのち

   一人の詩人が 今日 逝った

   その芸術でこの地上を飾りつつ



   その瞬間 私は偶然 彼のそばにいた

   このことを思うと 運命の力に打たれる

   死ぬのは我々の肉体で

   それは炎に委ねられるものと知っている



   死を逃れ得ぬ彼の肉体が

   不滅の詩をもたらしたことも知っている



   時の流れの中  私もまた

   太陽や雨と共に生きてきた



   しかし私が誇りに思うことは

   涙を流しつつ一人の男の足を洗ったという事実



   後悔を残したままで死なずにすむのは 何という幸い

   この場で死のうが 今やなんの心残りもない

   死の瞬間でさえ きっと私は思うだろう

   彼の足元で流した 涙のこと

1998



NBSA現地からのお知らせ 

まことに勝手ながら 9月3日に一時帰国することになりました  ヘルスチェックなど必要な年になり この際なのでじっくり見てもらおうと思います  大変恐縮ですが ネットニュース10月号はお休みさせていただきます ご了承ください



また ネパール渡航などの問い合わせ ご質問などお答えできることは 日本から返信が可能です 渥美まで直接ご連絡ください

yorikonepal@hotmail.com



NBSA 日本の窓口

住所:千葉県柏市 松葉町 6−8−1 (電)04−7136−0505

(ポコアポコ気付:ネパールの視覚障害者を支える会)

NBSAネットニュース 編集と文責 渥美よりこ カトマンドゥ在住



2012年9月1日



NBSA: http://nbsa.sakura.ne.jp/



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ネパールの視覚障がい者障害者を支える会

Nepal Blind Support Association NBSA)設立2002年3月1日



皆様のご支援を頂いて 設立10年を迎えました

主な事業は様々な本や教科書を音声化し 視覚障がい者の娯楽や勉強に役立て 将来の自立に向けたサポートを行っています  現在ネパールには視力に障がいのある小学校教員が400名ほどいて 皆自活の道を歩んでいます  中にはNBSAの奨学金で大学を卒業した人もいます  

今後とも皆様のご支援賜りますよう お願いいたします  



一般会費 1月500円  年間6000円 

特殊割引会費 年間3000円

郵便局 振込み番号0190−7−762775 ネパールの視覚障害者を支える会


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